日本の城を知り尽くした城郭ライター萩原さちこさんが、各地の城をめぐり、見どころや最新情報、ときにはグルメ情報もお伝えする連載「城旅へようこそ」。今回は鳥取市の鳥取城。山上にある戦国時代の城と、山麓(さんろく)にある江戸時代の城が共存する、珍しい城です。 鳥取城は、豊臣(羽柴)秀吉の三大城攻めのひとつ“渇(かつ)え殺し”の舞台として知られる。1581(天正9)年、信長の命令を受けた秀吉は、大軍を率いて吉川(きっかわ)経家や城兵ら約3400人がこもる鳥取城を包囲。鳥取城への援軍や兵糧の搬入を断ち、飢餓状態に追い込む兵糧攻めで開城させた。城内が餓死者の山と化す、戦国史上もっとも悲惨な籠城(ろうじょう)戦といわれている。 山麓一帯には石垣や水堀が残るが、これらは籠城時の鳥取城の名残ではない。経家が籠城した戦国時代の鳥取城の中心は、久松公園内にそびえる標高263メートルの久松山の山頂にあった。山麓の