戦後の国際タイポグラフィ様式を代表するデザイナー、カール・ゲルストナー(1930–2017年)の主著『デザイニング・プログラム』(独語版1963年/英語版1964年)。同書は絵画的な造形理論や実践的な職能マニュアルから離れ、デザインをシステマティックな論理でとらえた点で画期的な著作だった。同書が示している視点は現代なお重要なものとして多くの読者を引き付け、2007年に改訂版、2019年にオリジナルの復刻版(ともにLas Müller Publishers刊)が刊行されている。 実のところ、『デザイニング・プログラム』はオリジナル版から時を置かずして日本語訳(朝倉直巳訳、美術出版社、1966年)が刊行されていた。しかし、時代に埋もれるまま手に入りにくい状況が続き、その復刊を望む声はますます高まっていた。2020年10月、ついに同書の日本語版が新訳で刊行された。同書をいま読むことの意義や刊行の