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ブックマーク / agora-web.jp (48)

  • 『現代思想』で読む数学

    ★★★★☆ (評者)安田洋祐 現代思想2009年12月号 特集=日数学者たち 和算から現代数学まで 著者:上野 健爾 販売元:青土社 発売日:2009-11-27 クチコミを見る 自然科学系の素晴らしい特集をしばしば組む『現代思想』。昨年の12月号も「日数学者たち 和算から現代数学まで」という心躍る特集を組んでいたので、年末年始の休みを利用して堪能させて頂きました。 個人的に特に興味深かったのは、上野健爾さんと黒川信重さんの対談「数学者たちの到達点 和算から現代数学まで」と、吉田輝義さんの書下ろし「高木貞治と類体論の謎」。前者は副題の示すとおり、和算のルーツから20世紀の日数学者の活躍まで、幅広い話題を語り合う刺激的な内容。対談としては非常に長い分量(30ページ!)なのですが、全く読んでいて飽きませんでした。 後者の吉田さんは、2008年11月の『現代思想』に寄稿された「類体論

    『現代思想』で読む数学
  • 樹木葬のこと - 松本徹三

    私事で恐縮ですが、私の家には、岩手県一関市の知勝院というお寺から、「樹木に吹く風(花に生まれ変わる仏たち)」と題するニュースレターが定期的に送られてきます。何故かと言えば、この知勝院の管理する里山に、私の遺骨が先々埋められることになっているからです。 もう今から六年以上も前のことになりますが、私はこのお寺の住職である千坂げんぽうという方が、「北上川流域の美しい里山を、『樹木葬』という新しい形の埋葬の場所として利用することによって保全する」ということを考えておられることを知りました。この考えに大いに共鳴した私は、岩手県には何の縁故もありませんでしたが、すぐに現地の見学会に参加し、その場で10万円〔当時〕の手付金を払って、私自身の墓所にすることを決めたのです。 契約すると、笹や藪を間伐して整備された里山の中の随所に点在する直径1メートル程の割り当て場所に、遺骨を5人分まで、直接〔骨壷などに入れ

    樹木葬のこと - 松本徹三
  • 道理:日本人の法律観と経典主義という癌 - 矢澤豊

    前回、ヨーロッパ大陸法はローマ法に基づくとはいっても、歴史の流れから観た場合、実のところはローマ法の「移植/焼き直し」といったほうが事実に近い、というお話しをしました。今回は、日という国は法制度の「移植/焼き直し」を2回半してのけている国であるということを説明したいと思います。また現在の2回半目も、日人の心に宿る「経典主義」という癌を克服しないかぎり、遅かれ早かれ破綻するであろう、ということを述べたいと思います。 日が最初に異国から法制度を「移植/焼き直し」したのは、7世紀後半から8世紀の中頃までにわたる時期です。皆さんご案内のとおり、これは大化の改新(645年)以降、天皇家を中心とした中央集権国家の樹立を目指した時期にあたります。この間、天智天皇による近江令(668年?)、天武天皇の指示により制定された飛鳥浄御原令(689年)、そして藤原不比等がそのエネルギーと博識を注ぎ込んだ大宝

    道理:日本人の法律観と経典主義という癌 - 矢澤豊
  • 新聞社 - 日本の「神経系」は大丈夫か

    磯崎哲也事務所代表/磯崎 哲也 昨今の日は政権も交代してバタバタと落ち着かない状況であるが、こうした状況の下で心配されるのが、社会の状況を的確に伝える「神経系」たるマスコミの経営状況の悪化だ。 マスコミは、マスコミ自身の経営状況についてはほとんど報道しないため、一般市民には、マスコミが今どういった状況にあるのかは、わかりにくい。 言わずもがなではあるが、こうしたマスコミの苦境は、単に景気が一時的に悪化して広告費が減少しているというだけではなく、人々の生活の中で「ネット」が急速に台頭してきていることによって引き起こされている。実際、日だけでなく、アメリカやヨーロッパなど世界各国のマスコミで、前年比二桁の売上ダウンや巨額の赤字の発生といった現象が同時並行的に起こっている。 マスコミの中でも「テレビ」は、在京キー局各社が上場しており、各社の売上や利益の大幅な減少や一部企業の赤字転落については

    新聞社 - 日本の「神経系」は大丈夫か
  • 原発報道の教育効果 - 岡田克敏

    原子力発電ほど、その重要性に見合った評価がされて来なかったものはないと思います。日の電力供給の約3割占め、CO2排出がほとんどないため温暖化の防止にも有効であることが再評価されていますが、原発に対する国内世論は必ずしも好意的とは言えません。 このたび与党となった社民党は今も「脱原発」を掲げています。同時に2020年にCO2排出を90年比で30%減を主張していますが、はたして両立できるのでしょうか。長い野党時代に染みついた「非現実性」が通用するかが試されることになりそうです。 過去の原発に関する報道は事故や危険性に関するネガティブなものがほとんどであり、その多くが過大であったと思われます。柏崎刈羽原発の中越沖地震での報道は、変圧器から煙の出る映像が執拗に流され、ラドン温泉の約30立方cmに相当する微弱な放射能漏れが大きく報道されました。そのため風評被害が生じ、イタリアのサッカーチームが来日

    原発報道の教育効果 - 岡田克敏
  • 足利事件に関して、「勇気」ということ - 矢澤豊

    どうやら冤罪事件ということが確定しそうな「足利事件」。時効が成立してしまった今となっては、真犯人の追求は不可能なようです。 六月初め、東京高検の刑の執行停止手続きにより、服役者が17年ぶりに釈放されて以来、なにか「アゴラ」の上でコメントしようと思っていたのですが、最高検の伊藤次長検事を初めとして、さみだれ式にポツリ、ポツリとでてきた謝罪、そして安易な情緒に流れる日のメディアのたれ流し報道を眺めているうちに、すっかり自分の切り口の焦点が定まらなくなってしまい、弱っているうちに月があらたまってしまいました。 もちろん当事者ご人が不当に受けた苦痛や屈辱などの「人間ドラマ」も重要ですが、日の刑事司法の将来を念頭においた場合、この事件の意義は次の二つだと思います。 ひとつには「警察の犯罪捜査の質の向上」です。警察による取り調べの可視化は、喫緊の課題であり急務であるということは、すでに論をまたな

    足利事件に関して、「勇気」ということ - 矢澤豊
  • JR西社長起訴と処罰の希望 - 岡田克敏

    神戸地検は山崎正夫JR西日社長を7月8日、業務上過失致死傷罪で在宅起訴しました。朝日の9日朝刊には、「明石のトラウマ」を抱える神戸地検は、今回の捜査で被害者全員にどんな処罰を求めているかを尋ねる手紙を送り、面談を希望する人には担当検事らが直接応じてきた、と記されています。 「明石のトラウマ」とは01年7月花火大会で混雑する歩道橋上で11人が死亡した事故で明石署長らを不起訴としたことに対する負い目という意味のようです。この負い目のために神戸地検は被害者全員に「処罰の希望」を尋ね、「難易度の高い捜査」に対し4年間も頑張ってきたということが読み取れます。 検察が被害者に「処罰の希望」を尋ねたそうですが、それが捜査に影響を与えなかったと言えるでしょうか。マスコミや世論に対する検察の過剰な迎合は医療事故における医師の逮捕に結びつき、医療崩壊の一因となりました。強すぎる迎合姿勢は法の恣意的な運用に結

    JR西社長起訴と処罰の希望 - 岡田克敏
  • オーストラリアにおける「不都合な真実」の悲惨な結末 - 矢澤豊

    今年の2月7日前後に、オーストラリアのヴィクトリア州で大規模な山火事(ブッシュファイア)が同時発生し、200人近くが死亡、約500人が重軽傷を負い、約2,000世帯が住まいを失うという大惨事がありました。 私が当地香港で所属するラグビー・クラブには多くのオーストラリア人がいるので、あの時期は、「(家族や友人は)大丈夫だったか?」というのが挨拶代わりになっていました 。 幸い私の周りには、身内や知り合いに直接被害を受けた人はいませんでしたが、知り合いのオーストラリア人弁護士が吐きすてるように言った次の言葉が印象に残りました。 「バカなグリーニーたち(Greenies=環境保護主義者)の責任だよ。」 どういうことか聞いてみると、つまり次のようなことだったのです。 主に中国経済に牽引され好景気が続いたオーストラリアでは、ちょっとした不動産ブームがすすみ、ここ数年間に郊外エリアの外環部での宅地造成

    オーストラリアにおける「不都合な真実」の悲惨な結末 - 矢澤豊