日本におけるカトリック宣教のために16~17世紀に作られたキリシタン文献は、国字とローマ字を用いて日本語やラテン語などで書かれ、長らく日本語史を解明する貴重な資料として研究が進められてきた。近年では日本語だけでなく、宣教師の母語であるスペイン語やポルトガル語などまでを含む、宣教に関する言語学の研究資料としても新たな価値が見いだされている。本書はキリシタン語学の研究者13人が基礎的な知識から最近の研究まで、キリシタン時代の言葉について初学者にも分かりやすくまとめた入門書。 キリシタン語学の概説やこれまでの研究を学ぶ「理論編」と、個々の文献に焦点を当てて読み方を知る「実践編」の2部構成。理論編では日本宣教の過程も含めたキリシタン文献の歴史やその研究史、当時使用された文法書の展開などを紹介する。続く実践編ではカトリックの教義を示した『どちりなきりしたん』、福音書と聖人伝を日本語に訳した『バレト写
大正期「親鸞ブーム」を問い直す ― 近代日本の宗教≪8≫(1/2ページ) 龍谷大世界仏教文化研究センター リサーチ・アシスタント 大澤絢子氏 おおさわ・あやこ氏=1986年、茨城県生まれ。東京工業大大学院博士課程修了。博士(学術)。親鸞仏教センター嘱託研究員を経て、2016年より現職。主な論文に「浩々洞同人による『歎異抄』読解と親鸞像―倉田百三『出家とその弟子』への継承と相違」(『宗教研究』387号)。 浄土真宗の宗祖・親鸞は、鎌倉仏教を代表する宗教者の一人である。現存する史料において、親鸞自身がその生涯について語ったものはほとんどない。そのため彼がいかなる人生を歩んだのかは、未だ明らかでない点が多い。 そんな親鸞だが、長い時間をかけて語り継がれ、真宗の宗祖にとどまることなく表象されてきた。特に近代以降、多くの文学者たちが親鸞を描こうと試みただけでなく、思想家や哲学者たちの熱い視線が親鸞や
仏教界で、文化財保護や地域振興、防犯といった目的で3Dプリンターによる仏像の複製を試みる寺院が増えてきた。3Dプリンターは近年、導入コストの低下や精巧な複製が手軽にできることから、医療や建築、教育など様々な分野で利用されている。「本尊盗難の被害などに遭うことを考えれば、むしろ歓迎する」という声もあり、最新技術と信仰の両立が求められている。(佐藤慎太郎) 最新技術と信仰、両立できるか 千葉県南房総市の真言宗智山派小松寺の本堂を入って右側には、大小様々な吉祥天と毘沙門天が合わせて十数体、ショーケースに並んで説明書きと共に展示されている。全て3Dプリンターで複製したもので5月から始めた。その旨を掲示していないためか、あまりの精巧さに「寺から新しく仏様が出てきた」と勘違いする檀信徒もいる。 同寺では数年前から、千葉大デザイン文化計画研究室の協力のもと、所蔵する仏像の3Dデータ化を進めてきた。中世以
まつお・けんじ氏=1954年、長崎県生まれ。東京大大学院人文科学研究科博士課程を経て、98年から山形大教授。東京大特任教授、ロンドン大アジア・アフリカ研究所客員教授なども歴任。専門は日本仏教史、中世史。元日本仏教綜合研究学会会長。『勧進と破戒の中世史』『仏教入門』『忍性』など著書多数。 今年7月23日から9月19日まで奈良国立博物館(奈良市)で「生誕800年記念特別展 忍性 救済に捧げた生涯」(以下、「特別展忍性」と略記)が開催された。今月28日から神奈川県立金沢文庫(横浜市金沢区)でも開催される。私は、8月6日に奈良博での公開講座の講師を務めたが、予想外に多くの聴衆が集まり、入場制限がなされるほどであった。良観房忍性(1217~1303)に対する認知度が、以前よりは高くなってきたことを実感できたのは喜ばしい。しかし、まだまだ忍性の業績が人口に膾炙されているとは言いがたい。そこで、忍性伝を
浄土真宗本願寺派と真宗大谷派が経典の差別表現をめぐって、それぞれ部落解放同盟中央本部および同広島県連合会と進めてきた協議がヤマ場を迎えている。浄土真宗の根本聖典である浄土三部経の一つ、『観無量寿経』に出てくる「是栴陀羅(旃陀羅)」の言葉をどう扱うか。協議の中では、この言葉を削除することなども話し合われたが、教団側には経典の変更はできないとする意見も根強く、両派の対応が注目されている。(萩原典吉) 削除か注釈明記か 『観経』は、苦悩にあえぐ王妃・韋提希の救いを説く経典。父王を殺害した王子の阿闍世が母の韋提希も殺そうとした時、家臣が「古来、悪王を倒して王位に就いた王子は多いが、母を殺した王子はいない。それは栴陀羅のすることだ」と諫め、阿闍世が思い直したとされる。「栴陀羅」はインドの被差別民を意味する。 解放同盟広島県連の岡田英治副委員長は「長い間、墓石に刻まれた『栴陀羅男』などの意味を知らない
漫画やアニメなどある種のサブカルチャーに耽溺する「オタク」について、宗教研究の立場から議論するワークショップ「オタクにとって聖なるものとは何か」が先月、東京都文京区の日本女子大で開かれ、若手の研究者4人が登壇した。作品中に宗教性を見いだそうとする従来の研究方法に対して問題点が指摘され、彼らの生き方と信仰を結び付けるなど多様な観点から議論を深める必要性が示唆された。(甲田貴之) 行動や世界観を宗教用語で表現 女子高生が登山を楽しむアニメ『ヤマノススメ』の「聖地」となっている埼玉県飯能市の真言宗智山派観音寺。白い象の像の前にはアニメのパネルと絵馬掛所が設置されている 近藤光博・日本女子大准教授(宗教学)が中心となって活動している研究会が主催。近藤准教授は開催のきっかけについて、アニメや漫画好きの女学生の話を聞いていると作品などに対する情熱に宗教性を感じるとして、「オタク」文化が宗教と似ている背
おおたに・まさゆき氏=1972年、東京都生まれ。総合研究大学院大博士課程満期退学。著書は『角行系富士信仰 独創と盛衰の宗教』(岩田書院、2011年)、『富士講中興の祖・食行身禄伝』(岩田書院、13年)。富士信仰に関する論文・研究発表多数。 富士山が世界遺産に登録されたことで、その信仰に目が向けられるようになった。富士信仰のうち、富士講やその派生である不二道、また明治時代になって彼らが様変わりした実行教・扶桑教・丸山教といった教派神道諸教団などを、筆者は大きく「角行系富士信仰」と呼んでいる。「角行系」とは筆者の造語で、「自らの富士信仰が角行藤仏(1541~1646)という行者に由来している」と自覚する集団と個人が含まれる。「富士講」には修験道に基づく中部・近畿地方で行われるものと、主に関東で行われる角行系に属するものとがあって、二つの習俗は全く異なっているが、本稿の「富士講」はもっぱら角行系
なおばやし・ふたい氏=1958年、群馬県桐生市生まれ。龍谷大大学院文学研究科博士課程単位取得、花園大から博士(文学)の学位受領。龍谷大兼任講師・佛教大兼任講師・相愛大准教授を経て、4月から現職。浄土真宗本願寺派淨宗寺住職、花園大兼任講師、節談説教研究会副会長。著書に『日本古代仏教制度史研究』『大津浄土真宗寺院史』『節談椿原流の説教者』『日本三学受容史研究』(いずれも永田文昌堂刊)などがある。 今年2月、節談説教研究会の冬期錬成会の折、関西講談界で幅広く活躍する旭堂南海先生をお招きし、「古典の物語と向き合いそれを現代においてどう語っていくべきか」についてお話をしていただいた。むろん、芸能としての講談とあくまでも布教である節談の立ち位置の相違はいうまでもないが、先人たちが感動的な物語をいかに大切に守り伝えてきたのかを、あらためて実感させられた。それと同時に、布教の中で物語を話していく際の課題も
2015年12月3日 17時34分 浄土真宗本願寺派の本願寺人吉別院(熊本県人吉市)で11月29日、大谷光淳門主の親修で親鸞聖人750回大遠忌法要が営まれた。僧俗600人余りが、約360年にわたった念仏禁制を乗り越えて先人らが身命を賭し護り抜いた念仏を称えつつ、聖人の遺徳を偲んだ。人吉、球磨地方などの念仏禁制が解かれたのは1876(明治9)年。江戸時代の相良藩による過酷な弾圧の下で、番傘やまな板の中に本尊を隠して浄土真宗の教えを護り続けてきた門徒らを中心に、その2年後に「本願寺人吉説教所」が建立され、これが現在の人吉別院の本堂だ。同別院は、今回の大遠忌の記念事業で既存の建物のほとんどを除却して寺務所、納骨堂、職員住宅などを新築したが、先人の思いがこもった本堂は内陣を修復して建物自体はそのまま残した。法要は、一本一本の柱や畳、襖に念仏の声が染み込んだ本堂で営まれ、堂内、そして境内を埋めた参拝
2015年11月13日 13時34分 浄土真宗本願寺派は10日、宗門内外の若手僧侶らの取り組みに学ぶ「仏教プレゼン大会」を京都市下京区の宗務所で開いた。若者層への教化のアプローチを考えようと子ども・若者ご縁づくり推進室が企画し、同派の青少年教化担当者や他派からの聴講者約200人が出席した。プレゼンには20~40代の僧侶ら6人が登壇。山梨県大月市の平井裕善・本願寺派淨照寺副住職(41)は2011年から毎月、僧侶と若者らが食事を共にしながらざっくばらんに語り合う「僧職男子に癒されナイト☆」を東京・銀座で開いている。勤行や雅楽、法話などもあり、主観的には「ご法事をやっている」という感覚。「『若者向けだから』と勤行を簡略化したりはしない。そんなことをしなくても我々の話を十分聞いてもらえると実感している」「若者は仏教から離れてはいない。お寺の方が若者から離れているのではないか」と語った。(詳細は20
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