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ブックマーク / blog.goo.ne.jp/xizhou257 (11)

  • 『甲骨文字小字典』 - 博客 金烏工房

    落合淳思『甲骨文字小字典』(筑摩選書、2011年2月) 『甲骨文字の読み方』等でお馴染みの落合氏による甲骨文字の字典ということでチェックしてみましたが、小学校段階での教育漢字約300字に絞ったということで、白川静『常用字解』とコンセプトが似通っちゃったのが何とも残念です。思い切って現在ではそれほど使われていないが、甲骨文では頻用されている文字とか、現在では存在しない文字をドシドシ取り入れた方が、『常用字解』と差別化する意味でも、甲骨文の世界観を示すという意味でも良かったのではないかと思います。 書では各文字ごとにその文字の成り立ち(すなわち字源)と、甲骨文中での意味・使われ方とがそれぞれ説明されており、必ず甲骨文の例文が付されているのが評価できます。字源の部分では随分と白川静の説が批判されていますが、例えば「曲」字の項(書307頁)で「加藤・白川は竹などを曲げて作った器とし、藤堂は曲が

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  • 妄想力が開いた中国古史学? - 博客 金烏工房

    昨晩のツイートより。 satoshin257 さとうしん 大学院聴講生の方から「この面白いですね」と平勢御大のを見せられ、orzな気分になった今日の午後…… satoshin257 さとうしん ああいうを読むと、古代史に溢れているのは浪漫(ロマン)ではなく妄想(ファンタジー)ではないかという気がしてきてしようがない。 satoshin257 さとうしん @mas096 ぶっちゃけ中国古代史って、言ったもん勝ちの世界ですよね…… satoshin257 さとうしん @kizury 「網野史学って妄想(ファンタジー)だよね」とツッコミ入れた郷先生はとても偉いと思いますw でも中国古代史にはこのレベルの妄想家(ファンタジスタ)が何人もおりましてね…… satoshin257 さとうしん 興が乗ったついでにもう一つぶっちゃけておくか。白川静は世界で勝負できる妄想家(ファンタジスタ)。 sa

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  • 『古語の謎』 - 博客 金烏工房

    白石良夫『古語の謎 書き替えられる読みと意味』(中公新書、2010年11月) 「ひむがしの野にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ」この有名な柿人麻呂の歌は、実は古学が発展した江戸時代に「創られた」詠みであった。……このネタを枕にして、古学の発展により往時存在しなかったはずの古語やテキスト、はたまた考古学的遺物がいかに作られていったのかというのが書のテーマです。題材となっているのは日の古学ですが、これを漢学・中国学に置き換えても充分にあてはまる話で、個人的に色々と啓発される所がありました。 面白かったのは以下の3点。 ○偽物の考古学的遺物が作られるのは、古典研究の発展とその社会への浸透の賜物。……書ではこれに関連して志賀島金印(有名な「漢倭奴国王」の刻字があるもの)の偽物説についても触れています。しかしそうであるとすれば、偽物の文物が溢れかえっている現代中国は、古典研究や

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  • 『木簡から古代がみえる』 - 博客 金烏工房

    こんな所で業務連絡を書くのもどうかと思いますが、明日の阪中哲は残念ながら所用により参加できません(^^;) 遠方から来られる(かもしれない)先輩と久々にお会いしたかったのですが…… 木簡学会編『木簡から古代がみえる』(岩波新書、2010年6月) 木簡学会所属の研究者たちによる木簡の入門書。しかし個人的には木簡の内容より木簡自体の保存処理の話の方が面白かったのですが(^^;) 曰く、出土したばかりの木簡はタプタプに水を含んでいて高野豆腐かこんにゃくみたいな状態になっております。そこから注意深く泥を落としていって、その後ホウ砂・ホウ酸水溶液、あるいはホルマリンに漬けて保管。状態が安定してきたらフリーズドライなどの科学的保存処理を施して乾燥させるとのこと。このあたりは中国の竹簡と似たり寄ったりだなあと。上海博物館蔵戦国楚簡なんかも最初はやはり水気を含んでこんにゃくみたいな状態で、最終的にフリーズ

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  • 『地図帳中国地名カタカナ現地表記の怪』 - 博客 金烏工房

    明木茂夫『地図帳中国地名カタカナ現地表記の怪』(2010年5月) 以前高校で地理を教えていた時、中国の地名などが例えば「淮河」が「ホワイ川」、「瀋陽」が「シェンヤン」、「回族」が「ホイ族」といった具合に尽くカタカナ表記になっていたのに疑問を感じたものです。取り敢えず授業では漢字・カタカナ表記の両方を教え、テストではどちらで回答しても良いということにしたものの、果たしてこんなことでいいものかとモヤモヤを抱き続けることになったのでありました。 この地理の教科書や地図帳に出て来る中国の地名のカタカナ表記にツッコミを入れたのが書。書ではカタカナ表記が年代によってゆらぎ続けていること、そしてカタカナ表記が漢字廃止・制限論の中から生まれてきたことが明らかにされています。個人的には中国文学・語学の泰斗倉石武四郎がこれに関わっていたということがorzです…… 押っつけられた委員の仕事を適当にこなしてい

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  • 西周斉地出土青銅器銘文 - 博客 金烏工房

    入院中は当然のことながら『文物』『考古』などの中文専門誌を見ることが出来ない状態でした。それで退院する少し前に指導教授と電話で「最近何か新しい遺跡とか金文とか出ました?」「いやあ、そんなに大したの出てないな」というような話をしていたのですが、日nagaichiさんの『枕流亭ブログ』を見ると以下のような記事が…… 「太公望の墓……?」 要するに最近山東省淄博市高青県陳荘村にて西周期の墓葬やら車馬坑やらが発見され、おまけに「斉公」の銘がある青銅器まで出土したもんだから現地では「ここが太公望の墓だ!」という説まで出て来て大騒ぎという話です。「斉公」の銘のある青銅器については次の記事を参照。 「山東省首次発現“斉公”銘文和西周刻辞卜甲」(中国新聞網) 記事中では銘文の字釈を微妙に間違えてますが、「豊肇作厥祖甲斉公宝尊彝」、すなわち豊という人物が初めて祖先の祖甲斉公を祀る青銅器を作ったとありますね

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  • ユリイカ 白川静特集号 - 博客 金烏工房

    昨日Archerさんからお借りした『ユリイカ』白川静特集号を読んでますが、各氏の主張に以下のような違和感が…… ○白川静は異端の学者と言われるが、少なくとも古文字学の分野に限れば正統。 ○民俗学的な手法も鄭振鐸以来中国の学者も模索してきたものであり、やはり正統的。 ○中国の学者は白川静の研究を参照していないと言うが、寧ろこの分野で一番引用されている日の学者は白川静。白川著作集が中文訳されたらもっと増える。 ○当時上海博物館館長だった馬承源とのツーショット写真で、馬氏の名前が馬承準と誤記されていたのに泣いた。 取りあえずこれぐらいでしょうか。

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  • 『漢字五千年』その2(完) - 博客 金烏工房

    今回は後半の第5集から第8集まで。 第5集「翰墨情懐」 書法・書道について。王羲之や顔真卿、蘇軾などの書家の事績を紹介。李世民が王羲之の書にこだわったのは江南の民の心をつかむためであったとする。また唐以後は科挙において「以書取士」の方針が敷かれ、科挙に登第するには館閣体と呼ばれる書体をマスターする必要があるとされた。学才がありながら字が下手でなかなか進士に登第できなかった龔自珍のエピソードを紹介。また能書家であってもその人の人格が伴わなければその作品が正当に評価されないという伝統があるとし、蔡京・秦桧・厳崇らはそのような人格の劣る書家であったとする。 第6集「天下至宝」 書に関する道具・技術の発明について。毛筆は伝説上では秦の蒙恬が発明したとされるが、実際は戦国時代の楚の遺跡から出土例がある。毛筆は元々は絵画のために用いられ、文字出現以前から存在したと推測される。その他秦漢の竹簡と帛書、紙

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  • 『漢字五千年』その1 - 博客 金烏工房

    というわけで今まで何度か話題に出した『漢字五千年』各回の内容を紹介していきます。今回は全8集のうち前半4集分まで。 第1集「人類奇葩」 漢字と他地域の古文字、楔形文字・エジプトの象形文字・ラテン語などと比較。同じ時期に異民族の侵入によって分裂を迫られながらも、中国では漢字や漢文化が紐帯となって隋唐王朝による統一を達成したの対し、ローマ帝国ではラテン語圏の西ローマ帝国とギリシア語圏の東ローマ帝国とに分裂し、以後長らくキリスト教東西教会の対立を招いたとする。「中国の中世」という表現は用いていないものの、歴史認識自体は日の京都学派による時代区分論と似通っている点が注目されます。 また、「漢字を廃止して中国語の表音化を進めれば中国は存在し得ない」という米国学者の見解を紹介しているのは、過去の漢字簡化政策を振り返ると興味深いところ。 第2集「高天長河」 新石器時代の陶器符号から甲骨文字・金文・秦に

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  • 『甲骨文字に歴史をよむ』 - 博客 金烏工房

    落合淳思『甲骨文字に歴史をよむ』(ちくま新書、2008年7月) 基的に甲骨文字・甲骨文の読み方のみ解説していた前著に対し、今回は甲骨文を史料として殷代の社会や歴史などを読み解いていこうという主旨。殷王の系譜はその時々の都合によって変化していたのだといった著者のこれまでの研究成果が盛り込まれたものとなっています。 白川静が漢字の字源から呪術性を読み取る傾向を批判したり、夏商周断代工程は文献の記述をベースにしているという点で日の皇紀の制定と似たり寄ったりだとか、中国で2005年にその内容が発表された板方鼎を偽銘と断定したりと、ラディカルな主張が目立ちます。 ツッコミ所も無いわけではないですが、ここではひとつだけ。最初の方で殷代政治史を継続的に研究しているのは著者1人だけというような記述がありますが、何ぼなんでももう1人ぐらいはいます(^^;) 政治史にこだわらなければもうちょっと増えます。

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  • 『甲骨文字の読み方』 - 博客 金烏工房

    落合淳思『甲骨文字の読み方』(講談社現代新書、2007年8月) 殷代甲骨文字の解読の仕方や文章の読み方を初歩の初歩から解説した入門書です。 甲骨文の入門書としてはよく白川静の『甲骨文の世界』が取り上げられますが、あれはこのに書いてあるようなことを一通り飲み込んでいる人が読むで、入門書だと言われると少々違和感があるのも事実。また最近中国で(おそらくは殷墟が世界遺産に登録された関係なんでしょうけど)甲骨文の解説書が出まくってますが、それらも発見史・研究史を解説したものがほとんどで、文字の読み方から解説したものは無いと思います。 ただ、入門書として残念なのは参考文献の紹介が無いことですね。それこそ『甲骨文の世界』の末尾の参考文献欄を見ろということになるんでしょうけど、そちらの方は今から35年も前に出たということもあって、『甲骨文合集』などここ2~30年で出版された著録書・工具書については紹

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