「言語の社会心理学 - 伝えたいことは伝わるのか」岡本真一郎:著(中公新書) 本書の帯には 言葉は「文字どおり」には伝わらない と書いてあります。このように言われたら、多くの人が「そりゃそうだろう」と反応することでしょう。言葉で意を尽くせなかったことは、おそらく小学生でさえ何度か経験しているはずですから。 けれども改めて「それはどんな場面ですか」と問われると、なかなか思い浮かばないのではないでしょうか。それは「伝わる」ということに対して無自覚的だから。そのことをいやというほど教えてくれるのが本書です。 まずは内容を概観いただくために目次を紹介しましょう。 第1章 「文字どおり」には伝わらない 第2章 しゃべっていないのになぜ伝わるか 第3章 相手に気を配る 第4章 自分に気を配る 第5章 対人関係の裏側―皮肉、攻撃 第6章 伝えたいことは伝わるか 終章 伝えたいことを伝えるには? このよう
「かなづかいの歴史 ー 日本語を書くということ」今野真二:著(中公新書) 小学校低学年を担当されたことのある先生なら、子供たちに仮名遣いを教える難しさを経験なさっていることでしょう。難しさのポイントはいくつかあると思いますが、ひと言で言えば、発音と表記が単純に一致しないから、ということがあります。 たとえば「球を的へ投げる」と話す場合、「たまおまとえなげる」と発音するのに、文字に書く場合は「お→を」「え→へ」としなければなりません。なぜこのように、一見不合理な表記をしなければならないのでしょうか。 こうした現代仮名遣いでも難しいのに、戦前に用いられていた「歴史的仮名遣い」では、「きょう」は「けふ」、「ちょうちょう」は「てふてふ」などと表記されていました。ほんの百年ほどでこれだけ仮名遣いが異なるのですから、江戸はもちろん、室町鎌倉平安時代はどうだったのでしょうか。 本書は、仮名が成立した十世
「英語教育、迫り来る破綻」大津由紀雄 /江利川春雄/斎藤兆史/鳥飼玖美子:著(ひつじ書房) 最近は、強烈なタイトルの本が多いですから「迫り来る破綻」などと言われると、ネガティブな論調の内容を想像することでしょう。実際、本書で指摘されている問題点の一つ一つを理解していくと、暗い気持ちになります。 しかし本書は、単なるネガティブな英語教育批判本ではありません。問題の所在を様々なデータや資料でできるだけ客観的に示し、その上で、改善のための提案を具体的に示した、実にポジティブな提言書でした。 本書のすばらしさはたくさんありますが、強いてポイントを絞ると大きく次の3点を挙げることができます。 まず1つ目は著者選定のバランスが良いことです。4人の著者は、いずれも英語教育に携わりながらも、それぞれ他の専門も持っておられる方々。まずは目次をご覧ください。 「大学入試にTOEFL等」という人災から子どもを守
「失礼な敬語 誤用例から学ぶ、正しい使い方」野口恵子:著(光文社新書) 敬語というのは、日本語難しさの一つと言われています。学習指導要領でも必ず取り扱うことにはなっているものの、「私は敬語を完璧に使いこなしている」と断言できる人は、あまりいないのではないでしょうか。 それは、敬語の体系が難しいことに加え、日々変化する社会の中で、新しい敬語あるいは敬語もどきが生み出されているからでしょう。本書は、そうした新しい敬語も視野に入れて、シンプルで正しい敬語とは何かについて述べています。 著者の野口さんは、言語学者ではなく日本語とフランス語の先生。本書を購入するときは、「日本語を外国人に教える先生がなぜ?」と思いましたが、「あとがき」を読んで合点がいきました。 日本語学習者の期待に応えるべく、日本語教師は、何をどう教えるか、また何を教えないかに腐心するのだとか。たとえば「おみおつけ」のように、もう多
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