2000年度の募集の結果、三好 優美子さんの研究論文 『シューベルトの後期ピアノソナタ 歌曲を通じての一考察』が、紀要論文と して採用されました。 ※論文要旨※ シューベルトは、その生涯において数多くの歌曲を遺しており、それらについては多くの研究がなされている。一方でピアノ作品に目を向けるとピアノソナタ、特に遺作の3曲D958~D960についてはどのように捉えればいいのか、歌曲ほど多くは発言されていない。本稿は、晩年の長大なピアノソナタを理解するための解釈の一つの可能性を提示するものである。 はじめに、彼の歌曲にみられる想念「死」と「さすらい」の扱われ方を考察する。「死」は多くの歌曲に登場するが、晩年の連作歌曲集『冬の旅』では、死への憧れに加え、絶望感をもった主人公の姿が見られる。「さすらい」については、自分の居場所を探してあてもなくさまようさすらい人や巡礼者たちにも共通する心情が、シュー