1. 新刊の和田春樹『これだけは知っておきたい 日本と朝鮮の100年史』(平凡社新書)を読んだ。突っ込みどころも多いが、なかなか勉強になった。ただ、この本のテーマが多岐にわたるので、通して読むと、和田による問題の捉え方の特徴がよく見えてくるように思った。和田については、以前書いた「日本は右傾化しているのか、しているとすれば誰が進めているのか」の7~10 である程度触れたが、今回は別の角度から見ることにする。 和田は、批判的研究者(多くは朝鮮人)による司馬遼太郎や戦後日本の「平和主義」への批判について、その批判の正当性を認める。また、本書で和田が提示している、日清戦争や日露戦争を「朝鮮戦争」と捉える視点も、姜徳相ら朝鮮人の歴史研究者がそれらを「日本による朝鮮侵略戦争」と捉えているのに似ている。 和田は、そうした批判的研究に正面から反論するのではない。その正当性を認めた上で、ほとんど説得力のな