2017年から実施された、夜空を広く電波波長でスキャンする「VLA Sky Survey」の観測データから、非常に明るい珍しい電波源が発見されました。 天文学者は最初、これが何を映しているのか分かりませんでしたが、追跡観測の結果、驚くべき現象が明らかとなったのです。 カリフォルニア工科大学(caltech)の研究チームは、これがブラックホールあるいは中性子星が星の核に侵入し核融合を破壊することで起こした新しいタイプの超新星爆発だったと特定したのです。 これは理論的には予想されていましたが、実際観測によって確認されたのは初めてのことです。 この研究の詳細は、9月3日付で科学雑誌『Science』に掲載されています。
地球から50光年先で発見された星は、奇妙な特徴をもっている。冷たいようにも、熱いようにも見えるのだ。 一見矛盾した特徴を持つ褐色矮星の正式名称は「WISEA J153429.75-104303.3」。幸運な偶然によって発見されたことから「アクシデント(The Accident)」というニックネームで呼ばれている。 『The Astronomical Journal Letters』(21年6月30日付)に掲載された分析結果によると、アクシデントの年齢は100億年から130億歳。天の川が誕生した初期に形成された、非常に古い星であるそうだ。 冷たく熱い。矛盾した特徴を持つ褐色矮星、アクシデント アクシデントというニックネームがつけられたWISEA J153429.75-104303.3は「褐色矮星」というタイプに分類されている。 褐色矮星は、質量が小さく、軽水素の核融合が起こらずに主系列星にな
合同アルマ観測所は、欧州南天天文台の研究チームがアルマ望遠鏡を使って、若い恒星「Elias 2-27」を取り巻く原始惑星系円盤の特徴的な2本の渦巻き構造を深く掘り下げ、その渦巻きの起源は惑星や伴星との相互作用ではなく、重力による不安定性である可能性があると発表した。 アルマ望遠鏡で観測された、若い恒星であるElias 2-27の原始惑星系円盤。波長0.87mmの電波で観測された塵の分布が青色で、C18O分子の放射が黄色、13CO分子の放射が赤色で示されている。(c) Teresa Paneque-Carreño/ Bill Saxton,NRAO/AUI/NSF (出所:合同アルマ観測所Webサイト) Elias 2-27はへびつかい座の星形成領域にあり、地球からの距離は378光年。星図上ですぐ下側にある1等星がさそり座のα星アンタレス (c) Bill Saxton,NRAO/AUI/N
岡山大学は5月21日、「エンスタタイト・コンドライト隕石」に含まれる鉱物「コンドリュール」および「ユレイライト隕石」のケイ素と酸素の同位体組成分析を行うことにより、地球型惑星の約50%を構成するこれらの元素における、原始太陽系円盤での進化過程を明らかにしたと発表した。 同成果は、岡山大 惑星物質研究所・The Pheasant Memorial Laboratory(PML)の田中亮吏教授、Christian Potiszil助教、中村栄三教授(現・自然生命科学研究支援センター特任教授)らの研究チームによるもの。詳細は、米天文学会の国際学術誌「The Planetary Science Journal」に掲載された。 地球を含めて太陽系は約46億年前に誕生したと考えられている。ただし、最も古い岩石として知られるのはグリーンランドで採取された約38億年前のもので、プレート・テクトニクスや火山
総合研究大学院大学(総研大)ならびに国立天文台は、アルマ望遠鏡の観測データの中から、これまでは楕円銀河になると考えられていた宇宙初期の時代に、観測史上最古となる渦巻き構造を持つ銀河「BRI 1335-0417」を124億年前の宇宙に発見したことを発表した。 アルマ望遠鏡が観測した、124億年前という観測史上最古となる渦巻き構造を持つ銀河「BRI 1335-0417」。同銀河に含まれる炭素イオンが放つ電波を観測した画像だ。中心部の明るいバルジの上下に渦巻き構造(腕)が見えている (c) ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), T. Tsukui & S. Iguchi (出所:国立天文台Webサイト) 同成果は、総合研究大学院大学の津久井崇史大学院生、国立天文台/総合研究大学院大の井口聖教授らの研究チームによるもの。詳細は、米科学雑誌「Science」本誌に掲載されるにあたり、オンライン
史上最もリアルかつ高性能の星形成シミュレータ「STARFORGE(Star Formation in Gaseous Environments)」が誕生しました。 米・ノースウェスタン大学が、NSF(アメリカ国立科学財団)とNASA(アメリカ航空宇宙局)の支援のもと開発した「STARFORGE」は、ガス雲から星が誕生する様子を、これまでにない情報量と精密さ、解像度で3Dシミュレーションする最新型モデル。 従来は別個にされていたガスジェットや放射線などの条件を統合し、星の形成・発達・運動の同時シミュレーションに初成功しています。 STARFORGEを使ったシミュレーションでは早速、星形成に関する新事実が明らかになったようです。 研究は、5月17日付けで『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society』に掲載されています。
埼玉大学は5月13日、X線観測用の「eROSITA宇宙望遠鏡」を使った全天掃天観測などから、これまで静穏であった2つの銀河の中心核が準周期的な爆発を起こし、数時間おきに銀河全体に匹敵するほどに明るくなっていることを確認したと発表した。 同成果は、ドイツ・マックスプランク地球外物理学研究所(MPE)のリカルド・アコーディア大学院生、埼玉大大学院 理工学研究科 天文学研究室のマルテ・シュラム特任助教らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」に掲載された。 eROSITA宇宙望遠鏡はMPEによって開発され、ドイツとロシアにより運用される高エネルギー天体物理学宇宙展問題「Spektr-RG」の一部をなすX線観測装置だ。2019年にラグランジェ2ポイント周囲のハロー軌道に乗せられ、掃天観測を行っている。そんなeROSITAが数時間から20時間弱の時間で増光を繰り返し、最も明る
東京大学(東大)、東京工業大学(東工大)、北海道大学(北大)、高輝度光科学研究センター(JASRI)の4者は5月12日、地球深部の環境に相当する超高圧・高温実験、大型放射光施設SPring-8におけるX線回折測定、同位体顕微鏡による微小領域化学分析などを組み合わせ、地球形成期に存在していた大量の水の9割以上が水素としてコアに取り込まれたことを明らかにしたと発表した。 同成果は、東工大 地球生命研究所の田川翔特任助教(研究当時・東大大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻大学院生)、東大大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻/東工大 地球生命研究所の廣瀬敬教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。 46億年前に太陽系が誕生した際、原始惑星や微惑星同士、そのほか小天体との激しい衝突を繰り返していた原始地球もマグマの海(
アルマ望遠鏡を使った大規模掃天観測計画「ALMA Lensing Cluster Survey(ALCS)」の国際共同チームは、アルマ望遠鏡による観測でビッグバンから約9億年後(129億年前)の宇宙に天の川銀河の1/100の質量しかない小さな銀河を発見し、さらに同銀河が回転によって支えられていることが判明したと発表した。 同成果は、東京大学の河野孝太郎 教授、デンマーク・ニールス・ボーア研究所の藤本征史氏、英・ケンブリッジ大学のニコラス・ラポルテ氏らが参加する、ALCS国際共同チームによるもの。詳細が掲載された論文は2本あり、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」と「英国王立天文学会誌」に4月22日付でそれぞれ掲載された。 約138億年前に宇宙がビッグバンで誕生した数億年後に、第1世代の恒星“ファーストスター”が誕生し、それほど間を置かずに最初の小さな銀河
【▲ 重なり合う連星ブラックホールの見え方。NASAが公開したシミュレーション動画より(Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center/Jeremy Schnittman and Brian P. Powell)】周囲の時空間を大きく歪めるほど重力が強い天体「ブラックホール」。事象の地平面(イベント・ホライズン)の内側に入れば光でさえも脱出できないブラックホールを直接見ることはできませんが、国際協力プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」が観測した楕円銀河「M87」の超大質量ブラックホールのように、重力によって進む向きを曲げられた光(電磁波)を捉えることで間接的に観測することができます。 ■NASAが公開した「ブラックホールの見え方」のシミュレーション【▲ ブラックホールを横から見た場合のシミュレーション動画(Credit: NAS
国立天文台は3月15日、ブラックホールを隠す星間物質の物理的・化学的な性質に着目し、ブラックホール由来のX線がもたらす星間分子の破壊と加熱の様子を、アルマ望遠鏡を用いて超高解像度に観測することに成功したと発表した。 同成果は、国立天文台の泉拓磨氏らの研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。 太陽質量の20倍以上の大質量星が超新星爆発を起こしたあとには、ブラックホールがその忘れ形見として残される(20倍以上でも条件によっては中性子星が残されることもある)。ブラックホールにはいくつかの種類があり、このような超新星爆発で誕生するスタンダードなタイプは「恒星級ブラックホール」とも呼ばれる。恒星級ブラックホールは、仮にどれだけ巨大だったとしても、ベースとなる大質量星に上限があるため、その質量は最大でもせいぜい太陽の100倍程
国立天文台ならびに統計数理研究所(統数研)は2月16日、スーパーコンピュータを使った大規模シミュレーションによって、宇宙の極めて初期の様子を探る新しい解析方法を開発したと発表した。 同成果は、国立天文台 科学研究部/統数研 統計思考院の白崎正人助教、国立天文台 科学研究部の杉山尚徳特任助教、弘前大学 理工学研究科の高橋龍一氏、スペイン ラ・ラグーナ大学のFrancisco-Shu Kitaura氏らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、米物理学専門誌「Physical Review D」にオンライン掲載掲載された。 宇宙において銀河は、均等に存在しているわけではない。泡の表面のように無数の銀河が集まった領域と、泡の中のように銀河がほとんどない領域(ボイド)があり、こうした3次元構造は「宇宙の大規模構造」、「フィラメント構造」などと呼ばれる。こうした構造がなぜ生じたのかは、またどのようにし
東京大学(東大)ならびに京都産業大学(京産大)は3月1日、赤色超巨星のこれまで難しかった正確な温度測定を行うことを目的に、正確な温度測定を妨げる主要因となっていた上層大気の影響を受けにくい鉄原子吸収線のみを用いた温度決定法を確立したと共同で発表した。 同成果は、東大大学院 理学系研究科 天文学専攻の谷口大輔大学院生、同・松永典之助教、京産大 神山天文台の河北秀世天文台長らの共同研究チームによるもの。詳細は、「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」に掲載された。 人の一生に比べたら桁違いの長さだが、恒星にも寿命がある。主系列星でO型やB型などに分類される大質量星(太陽質量の8~9倍からそれ以上のもの)は、最期に現在の宇宙において最大規模の破壊現象である超新星爆発を起こして一生を終える(そのあとには中性子星かブラックホールが残され、
東北大学、東京大学 宇宙線研究所、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)は1月25日、宇宙で最も小さく暗い銀河の星の運動から、ダークマターの有力候補である「自己相互作用するダークマター」に対するその散乱する強さの調査を行った結果、その散乱は非常に弱く、密になりやすいことがわかったと共同で発表した。 同成果は、東北大大学院 理学研究科 天文学専攻の林航平特任助教、東大 宇宙線研究所の伊部昌宏准教授、同・小林伸氏、同・中山悠平氏、Kavli IPMUの白井智特任助教らの共同研究チームによるもの。詳細は、米物理学会発行の学会誌「Physical Review D」に掲載された。 我々の宇宙に銀河が形成されたのはダークマターがまず集まり、その重力によって水素ガスなどが集まって形成されたとされ、我々がここにこうして存在できるのもダークマターのお陰と考えられている。ま
米国立電波天文台は、チリのアルマ望遠鏡やジェミニ南望遠鏡、マゼラン・バーデ望遠鏡、ハワイのジェミニ北望遠鏡およびケック天文台などを用いた観測で、観測史上最遠となる約131億光年彼方に位置する「クエーサー」を発見したと発表した。またその中心には太陽質量の約16億倍の大質量ブラックホールがあり、天の川銀河全体の約1000倍の明るさで輝いていることも合わせて発表された。 同成果は、米・アリゾナ大学のフェイジ・ワン氏らの国際研究チームによるもの。詳細は、天文学専門誌「The Astrophysical Journal Letters」に掲載されると同時に、2021年1月にオンライン開催された米天文学会でも発表された。 クエーサーとは宇宙で最も明るい天体のひとつだ。120億光年以上という遠方にあっても観測が可能なほど極めて明るいことから、どれだけ明るいかがわかる。その明るさを生み出す膨大なエネルギー
東京大学 国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)が、宇宙初期の加速膨張であるインフレーション時にできた「子宇宙」が、そののちに原始ブラックホールになったとする理論を提唱した。さらに、この理論で示されたシナリオが、ハワイのすばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラハイパー・シュプリーム・カム(HSC)を用いた原始ブラックホール探索の観測で検証できることを示したことも発表された。 同成果は、Kavli IPMUのウラジーミル・タキストフ特任研究員、同・杉山素直大学院生、同・高田昌広主任研究者、米・カリフォルニア工科大学ロサンゼルス校のアレクサンダー・クセンコ教授ら、素粒子論、宇宙論、天文学者など多数の関連分野の研究者が結集した国際共同研究チームによるもの。詳細は、米物理学会が刊行する学術誌「Physical Review Letters」にオンライン掲載された。 1
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