ブラックユーモア、サイコホラー、ミステリ、SF、メルヘン。様々なタイプの乙一作品が一堂に会したバラエティ豊かな短編集。どの作品もわりとシンプルで、叙述トリックに凝っていた「GOTH」なんかに比べると「ひねりがない」感はあるものの、じゃあ物足りない出来なのかというと決してそうではありません。ボリュームはたっぷりあるし、10篇ぶっつづけで読んでも飽きが来ないだけの多彩さもあるし。基本はホラーだけど、ライトとダークの配分バランスがちょうどいい按配で読みやすいのもありがたい。怖い話にまったく耐性のない読者でも抵抗なく消化できる、守備範囲の広い本と言えましょう。よほどピーキーな趣味の持ち主でないかぎり、これ二冊読めば最低ひとつぐらいは好みに合う乙一作品を見つけられるのでは。 ちなみに僕は八〜九割がたヒットしたのでなんの不満もありません。ごちそうさまでした。 以下、収録作をひとつまみずつ紹介。微妙に順