『新世紀エヴァンゲリオン』以後のオタク評論が扱ってきた自意識の問題を軸にして、アニメ、ゲーム、ライトノベル、批評などなど日本のサブカルチャーを中心に大きな影響を与えたキーワード「セカイ系」を読み解き、ポスト『エヴァ』の時代=ゼロ年代のオタク史を論じる一冊。 『セカイ系とは何か』はタイトルが示すように「セカイ系」とは何かを説明している本だが、同時に「セカイ系」を一つの基準として、1995年以降のオタク史を概観する本である。1995〜1999年、2000〜2003年、2004〜2006年、2007〜2009年の四つに区切り、エヴァンゲリオンの登場と影響、その後に現われた作品傾向、セカイ系という言葉の拡散、現状と諸問題を、それぞれ整理して流れを解説する。 「セカイ系」というのはフィクションの傾向の一つと考えて問題ない。時代によって意味も受容のされ方も異なるが、原義(2002年)は「エヴァンゲリ
さやわか × ばるぼら〜対談:2000年代におけるインターネットの話 【後編】 2010年お正月企画の最後を飾るのは、昨年に引き続きさやわかさんとばるぼらさんのお二人です。2010年代を迎えたいま、ここ10年間のインターネットを改めて振り返ります。今夜は前編に引き続き、後編のお届けです! さやわか:サービスの中では、おそらくいま一番注目されているものの一つであるTwitterとかも、僕はゼロ年代後半の個人による編集能力の拡大という視点で語れるんじゃないのかなと思ってるんですけどね。 ばるぼら:最近、まとめるサイトができたじゃないですか。 さやわか:「Togetter」とかね。あんなのがまさにそうだと思うんです。Twitterでは文脈をユーザーが個別に作り出さないといけないという需要があるからこそ、ああいうサービスが登場するわけですよね。ユーザー同士が文脈を作ると言えばWikiなんかは古くか
Special issue for Silver Week in 2009. 2009シルバーウィーク特別企画 『彼氏彼女の事情 21』著者=津田雅美 発売=2005年8年5日 出版社=白泉社 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版 : 破』に端を発する 鼎談:泉信行 x さやわか x 村上裕一 2010年代の批評に向けて 第二回 ゼロ年代も残すところあと3カ月あまり。世に溢れる多種多様なコンテンツの中でも、アニメに対する関心度が一際集まる10年間だったように思います。そんなゼロ年代の最後の年に公開された『ヱヴァンゲリヲン新劇場版 : 破』。この作品を通じて行なわれた批評家たちの熱い対話の軌跡を全3回の特別企画としてご紹介いたします。 編註:この鼎談が行なわれた経緯は、泉信行氏がブログ上でさやわか氏のエントリについて言及した際に、さやわか氏がコメント上で「一度ゆっくり意見を交わしたい」と言われたことに
『漫画をめくる冒険』は、今年3月に出版された漫画評論の同人誌である。同人誌でありながら夏目房之介や宮本大人、伊藤剛など漫画批評家界隈で非常に高い評価を受け、著者の泉信行は『ユリイカ』6月号の特集「マンガ批評の新展開」においても大きくフィーチャーされた。現在では同人誌イベントにて販売されているほか、「タコシェ」などの同人誌を販売する書店や「Lilmag」などを通じてネット通販で入手できる。 では、本書がここまで評価される理由とは何なのか。それはこの本が漫画評論の更新を図ろうとする意識で書かれているからだ。本書において泉は、漫画のコマを「誰でもない者の視点」と「誰かの視点」に分け、特に後者、すなわち漫画内のキャラクターごとに絵柄が変化するという事実に注目する。 どういうことだろうか。これまでの漫画表現論は、基本的に「読者の目から見て絵がどうであるか」という視点で読まれてきた。それは泉が本書を執
special issue for the summer vacation 2008 2008夏休み特別企画! web sniper's book review 時代を切り拓くサブ・カルチャー批評 『ゼロ年代の想像力(早川書房)』 著者=宇野 常寛 【前編】 文=さやわか 『DEATH NOTE』、宮藤官九郎、よしながふみ……格差・郊外・ナショナリズム、激震するゼロ年代に生まれた物語たちの想像力は何を描いてきたのか。時代を更新するサブ・カルチャー批評の決定版。 昨年、『SFマガジン』誌上で連載が開始され、ネットを中心に大きな話題となった宇野常寛『ゼロ年代の想像力』がついに単行本化された。つまり、これは話題の本である。 連載開始当初から宇野が注目された理由とは、まずはやはり彼が「決断主義」という言葉によってゼロ年代のフィクションの特徴を抉り出すことに成功したからだろう。その達成は単行
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