世界的ベストセラー『21世紀の資本』の著者、トマ・ピケティ。『自然、文化、そして不平等——国際比較と歴史の視点から』(文藝春秋)では、「格差」について考察している。ここでは本書を一部抜粋して紹介。所得格差が最も少ない地域、最も多い地域はどこなのか。 ◆◆◆ では、所得から始めよう。ここでは、上位10%の所得がその国の所得全体に占める比率という比較的単純な指標を見ていく。 完全に平等な社会では、定義からして所得上位10%は人口の10%を占め、その所得が全体に占める比率も10%になるはずだ。対照的に完全に不平等な社会では、上位10%がすべての所得をさらってしまい、全体に占める比率は100%になる。もちろん、現実はこの両極端の間のどこかにある。 図1には、上位10%の所得がその国の所得全体に占める比率を5段階に区分して示した。比率が最も低い、すなわち平等に近いのは北欧で、20~30%だった。最も