匿名化の実社会での利用に向けての技術課題 中川裕志 東京大学 1. はじめに ビッグデータとりわけパーソナルデータの活用が 2013 年 6 月 に政府指針として打ち出された。前後して JR 東日本が収集し た顧客の Suica データを、日立を経由しての他業者への提供す ることに対する反対意見が噴出するという騒動が起こった。この 状況の下で政府のパーソナルデータに関する検討会が行われ, 技術検討ワーキング WG 報告[佐藤 2013](以下では「報告書」 と略記する.)が同年 12 月 10 日に公表された。 この報告書は技術的レベルの高い内容だが、そこで示された 方向性に対して IT 業界から、パーソナルデータを含むビッグデ ータの扱うビジネスを萎縮させるとして反対論があがっている。 一方、パーソナルデータに関連する法制度に関しては、日本 は不十分であるとして、EU からはゲノム情報