「ところが数学の研究者になるというのは自発的なものであって、しかもその自発性を持続させなければならない」 「金メダリストになることはできてもそのような自発性がなければどうにもならない。そういう意味で数学オリンピックは真の意味の数学者の世界とは無縁である」 同様のことは、アスリートのオリンピックにも言えるし、筆者の領分である音楽をはじめとする芸術にも完全に当てはまる。 競争に勝つというのは、すでに解答が準備された温室のトラックレースで要領よく立ち回ることに過ぎない。新しいものを何か作り出す、本当の意味で歴史を開拓するのに「使える」ものでは全くない。 では、志村さん自身はどのようなティーンの時期を過ごしたのだろうか? 志村五郎 1930年2月23日静岡県生まれ、2019年5月3日 大阪府没。プリンストン大学名誉教授。 盟友で東京大学助教授に就任したばかりで自ら命を絶った谷山豊(1927-58)