納豆は煮るか蒸した大豆に納豆菌が繁殖して出来る発酵食品で、特有の粘質物質(糸引き)と濃厚なうま味、迸るほどの栄養価、独特の匂いなど、どれをとっても不思議で神秘的な食べものである。日本人は昔から、これを味噌汁の中に入れたり、ご飯にかけたり、さまざまなものと和えたりして、大いに食べてきた。肉をほとんど食べなかった日本人にとって、味噌と共に貴重な蛋白質の供給源となって、大いに日本人を助けてきた有難い歴史を持っている。 この納豆は、日本だけにあるものではなく、我が輩が調査してきただけでもミャンマーやタイ、中国南部(雲南省西双版納)、インドのシッキム(ナガランド)、ネパール、ブータンなどにもあった。ただし、その造り方や形状、食べ方などはとてもまちまちで、従って出来上った納豆が、今日私たちが食べているものと同じような風味のものであると考えるのは無理であった。 さて、高野秀行さんの『謎のアジア納豆―そし
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