久しぶりに、小野不由美の「屍鬼」(上下巻)を読み返してみました。 まあ、だいたいの感想は前に文芸館のなかで書いたのと同じです。が、今回の再読は、もう結末がわかっているので余裕があります。そこで、ただストーリーに引っ張られて面白さを味わったあのときとは、また違う面が見えたような気がしました。 それは、「ムラ」という共同体に対する、かなり批判的な作者の視点ですね。こういう血縁地縁で閉じた共同体の在り様は、悪いことばかりじゃない、けど、自然との共存だの情のある人間関係だの、そんな優雅なもんじゃあ全然ない、もっと泥臭くて、排他的で、頑迷で、時には危険なんだと。それはどこに生きていても、人間の本質って、たぶんそうなんだという作者の諦念みたいなものが感じられました。そこから逃避したい気持ちを静信というキャラが体現してる、というような。 どこにいても、みんな顔見知り、誰が何をしているか、あっという間に口