1月30日に死去した加藤寛氏は、社会に役立つ「実学」の実践に取り組んだ経済学者だった。研究室に籠もるのではなく、消費税増税や国鉄の分割・民営化など困難な政策課題に立ち向かった。税財政や教育問題で提言を続けた姿勢は、再生に動き出した今の日本にも求められる。 「学者は社会に役立つことをしなくてはいけない。学者も戦わなくてはいけないことを教えてもらった」。経済学者として加藤氏の薫陶を受けた竹中平蔵慶応大教授は回顧する。竹中氏は郵政民営化にあたり、経済財政・郵政民営化担当相として加藤氏を政府の検討会議座長に招き、改革の推進力を担ってもらった。 象徴的なのが、消費税率の5%への引き上げだ。反対世論が強い中で、財政再建の必要性を貫いた。加藤氏の後に税調会長になった石弘光一橋大名誉教授は「反対派も納得させ、尊重する能力にたけていた。学者としては異才だった」と評価する。 財務官僚が減税に積極的な委員を交代