法人化という未曽有の変革を経験した2人の総長のインタビューからは、国立大学法人としての大学の課題と可能性が見えてきた。運営費交付金の減少とどのように向き合い、社会からの要請、学生の意見をいかに大学の意思決定に反映させるのか。20年にわたり国立大学法人が根本的に抱えてきた課題が学費問題を機に顕現した。この危機を前にして東大は進むべき方向へと舵(かじ)を切れるだろうか。海外の事例は一つの羅針盤となり得る。米国の大学を中心とした比較大学論を専門とする福留東土教授(東大大学院教育学研究科)に、大学経営や意思決定の場への学生の参画について話を聞いた。(取材・丹羽美貴) ──今回の学費問題をどのように捉えていますか 運営費交付金の減少や物価高によるコスト増が背景にあり、授業料値上げは致し方がないと思います。 東大は国立大学法人化以降、20年にわたって授業料を据え置いてきました。学生の金銭的負担を考慮し