組織や個人の中にある知識を共有し、生み出された高度な知識を経営に生かす「ナレッジマネジメント」。1990年代に一橋大学の野中郁次郎教授(当時、現・一橋大学名誉教授)らが提唱した経営理論は、これまで多くの企業によって実践されてきた。この記事では野中教授へのインタビューや国内企業による実践例を過去記事から振り返る。 野中教授によると、組織が持つ知識には「暗黙知」と「形式知」の2種類がある。暗黙知とは個人が持つ知識やノウハウ、長年の勘などのこと。一方の形式知は言葉や図表などの形でデータ化された知識のことを指している。この暗黙知を形式知に転換して共有し、組織全体を知的に進化させることがナレッジマネジメントの基本的な考え方だ。 暗黙知から形式知への転換は「SECI(セキ)モデル」というフレームワークに基づいて行われる。SECIモデルには「共同化」「表出化」「結合化」「内面化」という4つのプロセスがあ