Lesson445 書く歓び 人はなぜ、「書く」んだろうか? 会って話す、 目と目で通じ合う、 なにも言わずにだきしめる、 おいしいものや、音楽や、 きれいな景色で通じ合う‥‥、 コミュニケーションの方法なら、 ほかにいくらでもある。 文章なんて1行も書かなくたって、 楽しくくらしていけるのに。 私自身、編集者から書き手に転向して 丸9年になる。 「書く」ことは苦しい。 私がこれまで経験した、 ほかの仕事とは比べものにならない。 どんな仕事にも、それぞれの苦しさがある。 その苦しさを充分に承知していても、 たとえば、同じ量の記事でも、 話して、それをライターさんに まとめてもらうのと、 「自分で書く」のとは、まったく緊張感が違う。 「身を削る」のだ、書くことは。 書くものが見つからないときの 自分の存在意義までが、 しおしおとしぼんでいくような無意味感。 書こうとするものがはるか遠くにあり