巨大なティラノサウルスやトリケラトプスに迎えられると、「こんにちは」と 挨拶 ( あいさつ ) せずにいられない。 取材した東京・上野の国立科学博物館には、年間パスで通う。恐竜など約1000種の学名と、それらに使われる2000語以上の単語を解説した辞典の著者は、恐竜好きの主婦だ。 「学名のほかすてきな和名がある植物と違い、恐竜は学名が呼び名になっていて、刊行物によって読み方がバラバラで」。好きな語学を役立てようと、執筆を始めた。フランス語の実務翻訳の仕事をこなしてきた経験に加え、50歳で学び始めたラテン語と古典ギリシャ語が生きた。完成まで5年。研究者が使える水準を目指し、小林快次・北海道大准教授と藤原慎一・名古屋大助教が監修で支えた。 学名にこめられた豊かな情報を読み取るには、正しい理解が欠かせない。 ティラノサウルスは「暴君トカゲ」の意味。だが、古典ギリシャ語で暴君を表す【tyranno