動物倫理はカニバリズムを認めるか ――人間と動物をめぐる諸問題 浜野 喬士/早稲田大学文学学術院助教 「有感性」と「種差別」 アメリカの倫理学者マーサ・ヌスバウムの言葉を借りれば、動物と人間の関係という問題は、今日まさに「正義のフロンティア」に位置している。近代以降人間においては、国籍、人種、性別、性愛、宗教を問わず、人間というだけで認められるに至った―――「開拓」された―――権利というものを、動物という「未開拓地」へと拡張してよいのか、それが問われる「フロンティア」なのである。捕鯨、イルカ漁、闘牛、動物実験、殺処分、ペット、集約的工場畜産、サーカス、動物園等々、これらをめぐる論争の背景となっているのは、こうした問題である。 現代の動物倫理学にとって争点は「種」ではない。「有感性」という概念である。代表的な動物倫理学者ピーター・シンガーが、一九世紀の哲学者ベンサムの功利主義を念頭に導入した
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