『太陽帆走』 八重洋一郎著 洪水企画・1728円 詩人は、あとがきで「死への恐怖、あるいは存在しないことへの恐怖。これは実に激しく、今でもその恐怖に脅迫されてものを考えているような気がする」と書いている。 筆者も同様の、在ることの不安と在らざることの恐怖におびえ錯乱した経験を持っている。宇宙の果ての果てを考える場合もそうである。思考が恐怖を生む。筆者(たぶんたいていの人)は、思考が恐怖の穴に落ちるのを日常的な喜怒哀楽や諦念で避け、あるいは何かにすがることでごまかして生きている。詩人は違う。存在とは何か、宇宙とは、死とは、と深く思索することで恐怖を克服しようとするのである。本書はその結晶である。結晶には心打つ響きがある。それは詩と呼ぶべきものだ。 詩人はまず、物理学者ら先哲の優れた思想を読み解きながら、宇宙への思索を深めていく。巨大な帆を広げ、「惑星間をおもうままに巡回航行する」太陽帆走は広