ほとんどと言っていいくらいジャズには明るくない聞き手であるにもかかわらず、矢野沙織のニュー・アルバム『Bubble Bubble Bebop』に心惹かれたのは、サルサ・ピアノの巨人エディ・パルミエリの70年代の名曲「Puerto Rico」を、“好きで好きでたまんない♥”、そう言わんばかりの全力投球マナーで、がっつりカヴァーしていたから。原曲にあったスペイン語歌唱のないインスト・ヴァージョンながら、彼女自身が吹くアルト・サックスが目一杯の“歌心”を伝えてくる。そうした風情がなんともうれしく、彼女をこの曲へといざなった心持ちについて、なにはともあれ聞きたくなってくる。こんな奏者がやっているなら、ちょい敷居が高く思えていた“ビ・バップ”にも、親しみをもって近づけるかも……なぁんて思ったりして。