以前から見ようと思って留意していたフランス映画「パリ20区、僕たちのクラス(Entre les murs)」を見た。邦題からも察せられるように教育をテーマにした映画である。日本公開は2010年だが、元のフランスでは2008年の作品なので、現時点からすると少し古い時代になったかもしれない。が、教育環境にはそう大きな変化もないのだろうと思う。 物語は、と切り出してみて、さしたる物語はない。むしろ、ドキュメンタリー作品であるかのように見える。実は、そこにこの作品の映画としての真価があるのだが、それでも、物語っぽい部分を追ってみよう。 場所はパリ20区の中学校。パリの街はルーブル美術館のある1区から渦巻き状に区番号が振ってあって、20区が最後になる。つまり、パリのはずれということだが、その意味合いは、「ボンリュー(banlieue)」に近く、ボンリューというのは訳語は「郊外」だが、よく「ボンリュー