第2次世界大戦終結10年後の1955年10月、急速な経済成長を遂げるアメリカで、若き詩人ギンズバーグがスクエアな背広を脱ぎ捨て、『HOWL(邦題:吠える)』を発表した。この詩はビートニクのバイブルとなり、刊行まもなく発売禁止(わいせつ罪)の憂き目にあいながらも、アメリカの若者の絶大な支持を得て、ヒッピームーブメントにつながる大転換を起こした。 「この詩文が震災後1年間、私の頭のなかで鳴りやまなかったんです」。写真家の堀清英は言う。「原始に帰り、人間として再出発すること。自然の摂理に則った考え、行動、に立ち返るべきだと思いました。ギンズバーグの詩は、人間性の原点への回帰をうながしてくれます。『HOWL』を読み直し、自分なりに写真でできることを考え始めました」 そうして浮かび上がったのは、「敗戦国」「放射能」「コミュニケーション」「政策」「メディアコントロール」といったアイディアだった。 「『