台風の合間を縫って、久々の青空が頭上にさえわたる。炎天下、灼熱(しゃくねつ)の里山。涼やかな風は、どこかで雨が降っている証し。送り火と首を垂れ始めた稲穂に夏の終わりを感じながらも、汗だくの酷暑が秋の気配を遠ざける。 行く白雲を望みながら、冷たい麦茶で喉を潤す。お盆明け、午前中から強い日差しが照り付ける水田のあぜ斜面。少しでも涼を求めて、山野草の陰に身を寄せてしゃがむ。気温は30度以上で、虫の姿さえまばら。朝露もすっかり乾き切った。片や、ツリガネニンジンがくじけず花を咲かせている。釣鐘(つりがね)のような花と朝鮮ニンジンに似た根が種名の由来。7~10月にかけて咲き、草丈は1メートルを超える。定期的な草刈り、あぜ焼きによる草地環境の維持と、地面から染み出す水分が全国的に希少な植生を現代に留めているのだ。 見た目だけで音は鳴らないツリガネニンジンの花。もし、本種の花が風に揺られて鳴ったなら、実に