ウエルシュ菌(Clostridium perfringens )は、ヒトや動物の大腸内常在菌であり、下水、河川、海、耕地などの土壌に広く分布する。ヒトの感染症としては食中毒の他に、ガス壊疽、化膿性感染症、敗血症等が知られているが、本稿では最も多発するウエルシュ菌食中毒を中心に記載する。 ウエルシュ菌食中毒は、エンテロトキシン産生性ウエルシュ菌(下痢原性ウエルシュ菌)が大量に増殖した食品を喫食することにより、本菌が腸管内で増殖して、芽胞を形成する際に産生・放出するエンテロトキシンにより発症する感染型食中毒である。 疫 学 わが国におけるウエルシュ菌食中毒事件数は年間20~40件(平均28件)程度で、それほど多いものではない。しかし、1事件あたりの平均患者数は83.7名で、他の細菌性食中毒に比べて圧倒的に多く、大規模事例の多いことが分かる(表)。本菌による食中毒の発生場所は、大量の食事を取