いよいよ年末。年末といえば一年のまとめをするのが世間の通例。しかし年間ベスト10のたぐいは年度末にやるのが私の旧サイト時代からの習慣なので、ここには今年出た新刊に限った、ランク付けなしの紹介記事を書いておこう。 まず1月に出たレム『大失敗』――これは難物だったな。 2月は、岩波文庫リクエスト復刊で赤帯が大量に重版されたのが嬉しい事件だった。フローベール『ブヴァールとペキュシェ』のような奇書から、コロレンコ、レスコーフのような地味めな良作までいろいろな作品が復刊されたけれど、一冊選ぶなら戦後初復刊になるマイエル『聖者』だろう。中世イングランドを舞台にした歴史小説の傑作。 また岩波からはアクーニンも出た。登場人物同士の心理の読みあいが緊迫感を生んでいる『リヴァイアサン号殺人事件』と、破天荒なアクション描写が魅力の『アキレス将軍暗殺事件』、同一シリーズながらまったく方向性が違っており、併せて読む