連載目次 IT訴訟事例を例にとり、トラブルの予防策と対処法を解説する本連載。今回は、今やソフトウェア業界においては、当たり前のように行われるようになった「裁量労働制」にまつわる紛争事例を取り上げる。 裁量労働制とは、労働時間が労働者の裁量に委ねられている労働契約である。 社員は約束した価値を創出すれば1日8時間(※)働く必要はなく、自らの裁量で実際に働く時間を決められる。約束しただけの価値とは、営業職ならば売上高かもしれないし、システムエンジニアならば予定された分量の設計や分析ドキュメントかもしれない。 とにかく「期日まで」に「しかるべき品質の成果物」を「しかるべき量」アウトプットすればよく、効率良く作業をすれば1日の労働が4時間であっても構わないということになる。労働者にとっては、効率良く作業をすれば、時間的にも体力的にもメリットが出る制度ではある。 ※1日8時間:法定時間(1日8時間、