記事:春秋社 懇親会での忘れがたい思い出から話は始まる。 書籍情報はこちら 哲学者は「人生の意味」が苦手かもしれない もう十数年も前のことになるけども、ある哲学の学会の懇親会で同席した年長の研究者の人から自分の専門について尋ねられたことがある。そこで私は、さしあたり最近関心があることとして「人生の意味に関心があります」と答えた。どうやらその人は私の返事が冗談だと思ったのか、少し笑って「それは難しい問題ですね。ところで本当のご専門は何なんですか」と返してきた……。 これは私にとって忘れがたい思い出だ。自分の研究が馬鹿にされたという感じはない。どちらかと言えば、その思い出には少しユーモラスな感じが伴っている。 サイモン・クリッチリーの『ヨーロッパ大陸の哲学』(佐藤透訳、岩波書店、2004)でも、職業的哲学者にありがちな困惑として、次のような場面が描かれている。 専門職業的な哲学者がパーティで見