3月18日、リーガエスパニョーラ第30節。エイバルの日本人選手である乾貴士は、勝ち点1をもたらす同点弾をアシストした。左サイドを闊歩し、ヘタフェのディフェンダーにを翻弄。手のひらで転がし、完璧なクロスを送り込んだ。摩擦のない床を滑るようにボールを持ち出し、いつでもトップスピードに乗れるのが特徴だろうか。劇的なスピードの変化によって、右サイドバックには尻餅をつかせている。 現地を取材して、乾に対する評価は驚くほどに高かった。 「ボールを持ったら、なにかを起こす予感がある」 そう言って期待を込めるのはファンだけではない。辛口の評論家や指導者たちも、その才能に惚れ込んでいた。ボールを持ち、仕掛け、崩す。その単純なプレーにクオリティを見いだしていた。開幕直後は4,5番手のサイドアタッカーだったが、得点やアシストを重ね、献身性を見せつけ、今や2,3番手に上がった。 「1対1に関しては、圧倒的な強さが