第二次世界大戦が終わってから70年近くが経つにもかかわらず、いまだナチスというのは悪のレベルを推し量る一つの「ものさし」である。狂信的な集団による凄惨な事件の話を見聞きする度に、ナチスと比べてどちらが非道なのか、そして双方に共通するものは何なのかという問いが頭をよぎる。しかし語り尽くされたであろうナチスにも、まだまだ掘り起こされていない歴史が存在した。 1945年8月、ニュルンベルクでのこと。かつて加害者として収容所を君臨したナチの高官たちは、今や戦犯としての裁きを待つしかない憐れな捕虜となっていた。 当時52歳であったヘルマン・ゲーリングは、ナチ党において極めて悪評の高かった数々の活動の計画や実施を担った人物である。内部粛清として有名な長いナイフの夜事件、ゲシュタポの創設、反ナチ派用の強制収容所の設立、政敵の追放。第二次世界大戦までに彼を上回る肩書を保持していたのは、アドルフ・ヒトラーた