コロナ禍という未知の事態に放り込まれた医学界では、対策の方針や見解を巡って専門家と非専門家が入り混じる形で侃侃諤諤の議論がなされている。これはどこかで見た光景だな、と思ったら、既に過去のものと思われたデフレ不況が日本のみならず先進国世界で生じそうになるという状況に直面した経済学における議論に似ていなくもないことに気が付いた。以下では、特にアナロジカルに似ていると思った両者の論点を思いつくままに並べてみる。 マスクと量的緩和――効果の認識の変遷 当初、マスクの網目に比べてウイルスはあまりに小さいので、感染者が飛沫を飛ばすのを防ぐ点でマスクは効果があるが、ウイルスを吸い込むのを防ぐ点では効果が乏しい、という話があった。しかしその後、飛沫を吸い込むのを防ぐという点でも効果があることが分かり、マスクの重要性が再認識された*1。 量的緩和の効果についてバーナンキは「QEの問題点は実際には効果があるの