養殖マグロといえば近畿大学の近大マグロが有名だが、エサ代がかかる、出荷まで3年かかるなど、課題もある。経済学者として水産業を分析する山下東子さんは「愛媛大が完全養殖に成功したマグロの一種スマは、出荷まで8カ月。味はクロマグロに似ておりトロ風味。しかも養殖で魚を選抜することで味を改良できる。ここまで長所が並ぶと、もうスマに軍配を上げざるを得ないのではないか」という――。 ※本稿は、山下東子『新さかなの経済学 漁業のアポリア』(日本評論社)の一部を再編集したものです。 マグロ完全養殖の救世主になった「近大マグロ」だが…… 天然のマグロには国際的に漁獲制限がかかっており、一方で養殖用に海で稚魚を集めることも共有資源であるマグロの青田買い、つまり私物化に当たる。この問題に終止符を打ってくれるのが「近大マグロ」、すなわち天然種苗に頼らない完全養殖で、2004年から出荷が始まっている。2023年の出荷