「日本の基幹病院をコロナから守るために必要な軸」シリーズは、一応区切りと致します。 区切りに際して、今日(4月10日現在)の現場の声・実態を記しておきたいと思います。編集長には悲痛とも諦めとも思える声です。
「日本の基幹病院をコロナから守るために必要な軸」シリーズは、一応区切りと致します。 区切りに際して、今日(4月10日現在)の現場の声・実態を記しておきたいと思います。編集長には悲痛とも諦めとも思える声です。
日本の基幹病院は新型コロナ以前で既に写真のトラックのような状態でした。そして新型コロナが加わった分だけ心筋梗塞や交通外傷が減るわけではなく、更にこの荷台に新型コロナを乗せようとしているのです。既に一杯の荷台に人を乗せるのですから、どうしても必要な人だけ乗せる工夫が必要です。 荷台に乗せるどうかの判断は「新型コロナであるか否か」ではなく「病院のケアが必要かどうか」です。 原因微生物が新型コロナでも、インフルエンザでも、肺炎球菌でも病院のケアが必要な人です。
今年はA型がインフルエンザ全体の7割を占め、ワクチンは25%しか有効でなかった・・とCDCの研究者は言う。 より精密に有効性は・・ A (H3N2) 型に25% B型に42% A型 (H1N1)pdm09には67% でも「有効性」という言葉に注意が必要で、通常の有効性は「罹患を防いだかどうか」で測定されるが、もっと大事な事は「肺炎などの合併症や死亡を減らすか」がより重要である。 でも残念ながら「肺炎などの合併症や死亡を減らすか」の測定は特別な研究でなければ測定できないので表現されにくい・・ (William Schaffner, MD, of Vanderbilt University School of Medicine) 詳細は以下をどぞ↓↓ https://www.medpagetoday.com/infectiousdisease/uritheflu/71181?xid=NL_br
○○の原因は××だ、いや△△だ、、、という議論があるとき、どのように検証できるのか(できないか)。 専門家でも意見が対立したらどうなるのか。 医療系の大学や学校に進学した人は、疫学のエピソードとして、あるいは歴史上の人物の逸話として学んだことがあるかもしれません。 脚気の話です。昔の話、、、ですが今でも診断されています。 【参考】 ・NATROM先生 2008-12-22 衝心脚気についての医学的定説 心臓 Vol. 35 (2003) No. 12 p. 833-837 ・症例 脚気心により多臓器不全を発症した1例 ・過度の食事制限によって脚気ニューロパシーおよび脚気心をきたした緩徐進行性1型糖尿病の1例 糖尿病 Vol. 48 (2005) No. 2 P 103-107 ・ビタミンB1投与が著効したアルコール性脚気心の1症例 日本集中治療医学会雑誌 Vol. 12 (2005) No
5月も終わり。HPVワクチン関連情報定期サマリーです。 報道関係の問い合わせや取材の内容がだいぶかわってきました。 市販後10年のデータが蓄積され、また各国の政策/取り組み状況等をみて、日本の状況がたいへん特殊であること、接種後の体調不良を"被害者"として説明するための症例定義の不確かさからくる混乱、その背景にある動きにも気づいたということなのかもしれません。 5月23日には厚生労働省の副反応/安全部会の会議も開かれ、7カ月分の副反応報告データが公開されています。 最近は接種じたいが減っていますので、この期間に報告されたのは「以前接種した」人での体調不良の有害事象でありますが、会議の中では「特定の医師からまとめて報告されたもの」であるという補足説明があったので、この時期に皆が一斉に発症!というような疫学データ上のシグナルではないとのことです。 (詳しい人によると多くが3名の医師からの報告)
2種類あるHPVワクチン接種「の後」におきた体調の変化について、各自治体が調査をしていますが、だいたい結果は同じような内容です。 情報の精度(正確さや質)を高めるためには、「ざっくりきいてみました!」「アンケートくばってみました」ではなくて1ランク上の調査が必要です。さらに、もっと分母の大きな集団を長期間観察する研究も必要です。実際には多数にヒアリングなんてできませんので、もともと予防接種や医療の国民あるいは保険加入者のデータベースにアクセスのある人(国)にしか出せなかったりします。 そもそも2種類あるのに、「子宮頸がんワクチン」といっしょくたに(存在しないワクチンを想定して)質問をしていいのか?というあたりに自治体も真実追求系の方も疑問がなさそうなのが不思議です。 このワクチンを抹殺したいひとたちのロジックにあえてのっているのか、そもそももう"ワクチンそのもの"を原因とは考えていないとい
2006年に世界で承認販売が始まってから、ことしで10年目。臨床試験中のデータを含めると10年以上のデータがあります。新しいワクチン、思春期のワクチン、女性に接種するワクチンということで各国で導入初期には副反応に関連する話題も熱かったですが、さすがに9年もたったところで、○○が問題だという「騒動」はごく一部の話になっています。 いっときフィーバーしていた米国でもメディアの扱いが小さくなると有害事象の報告も減っています。 現時点では、このワクチンの接種の安全性は他のワクチンと変わらないレベルと評価されています。 WHO、世界の専門機関も(恵まれた国でのアクセスの話ですが)推奨をしています。 【整理の仕方】 「よくある副反応」 「まれな副反応」 「とてもまれな副反応」 「副反応とは考えにくい紛れ込みの症例」 「有害事象だが副反応とは考えにくいもの」 といったかたちで整理ができます。 刺したとこ
ワクチンや予防接種(とか他の医薬品でもいいんですが)についてネガティブな人たちがいます。ポジティブな人もいます。100かゼロという極端な人は少数で、その程度には差があります。 「断固反対、他の人のアクセスや選択も認めない!」という人もいれば、「自分は選択しないが他の人のことは知らない」という人もいます。 反対まではしていないけれど「疑問」「懐疑」の人もいるし、感染症や合併症の方が怖いのはわかっているのでしているけど「躊躇」がある、という人もいます。 判断の根拠は情報源や自分や半径2メートルくらいのところで知る体験談だったり、専門家向けのデーターベースや論文にアクセスするような人もいます。 見ている情報とその情報探しの目的もこれまた多様で、例えばワクチンの安全性や有効性はよいとしても、大勢の人に接種することは「むだじゃないか?」「費用対効果がよくないのでは」ということでの反対や批判もあります
読売新聞の地域版(静岡版)が、静岡市の子宮頸がんワクチン(正確にはHPVワクチン)の接種後の体調変化調査を記事にしていました。 2015年10月現在、各メディアや取材担当記者が、どの程度学び、どのような関心を持ち、どのような意図で何を伝えようとしているのかはたいへん興味深い点ですので、この最新記事をもとに週末に関連情報を見渡してみました。 一般方や保護者には広くヒアリグをしてみるという(時間やお金のかかる)作業をしてくださった自治体の資料の方が具体的に役立つのではないかと思いました。 その読売新聞の記事は2015年10月17日のものです。 タイトルは、「子宮頸がんワクチン 接種後、体調変化28%」 この問題で「真実追究系」で熱い記者が、数字ベースで検討できる内容についてはあまり関心をしめさない、センセーショナルに書けないものはフォローしないという報道バイアス(学会等での発表バイアスのような
アナウンスをしなくても、ノロウイルスがはやる時期ではあるのですが、少し前に厚労省がわざわざ、例年より大流行するかもよ!的発表をして、一般メディアでも記事が掲載されていました。 感染症が専門の皆様は、毎週のIDWR(感染症週報)や病原微生物研修t情報(IASR)情報もチェックされていると思いますが、 その背景として、従来とは異なるノロウイルスの株、、、という情報があります。 今年の10月のアウトブレイクからです。IASR 2012年11月28日 「2012(平成24)年10月に、新潟県長岡保健所管内の2つの福祉施設で胃腸炎の集団発生があった。今シーズン初の集団発生事例で、この2事例の患者から、遺伝子型GII/4のノロウイルスが検出された。COG2F/G2SKR増幅領域(N/S領域)の塩基配列に基づく系統樹解析の結果、本GII/4株は従来のGII/4変異株とは異なる、新しいGII/4変異株(G
昨年のエボラ騒動のときから、エボラは日本に入ってくると思うか? と何度も質問を受けました。 入ってきてもおかしくはないけど、出国時検疫含めた外国に入らないための対策をギリギリまでやってるので、直行便もない日本にはいる確率的にはゼロに近く、入ってくるならMERSでしょ、と話してたときはMERSはスルーされていました。 今週はMERSのといあわせばかりです。 MERSはどんな病気か感染経路から語ってくれ、という記者には、まずは"ずいぶん前から"公開されている厚生労働省のQ&Aを読んで、さらに質問があったら連絡ください、と伝えてあります。 なんとか語らせたい内容は、韓国の関係者に落ち度があった、医療機関が失敗をした、日本でも起きかねない、厚労省の対応が十分でない、などの批判記事で、個人や社会を守る視点ではないことが残念です。 2012年からのとりくみをまずざっとレビューするところから始めればいい
(追記あり) SARSのときにアジアの周辺国に拡大していかなかったことや、米国に1例もはいらなかったことは幸運という語りが学会でもされますが、 エボラについては直行便が流行地からとんでいるEUで、関係者がたくさん行き来しているなかで、いままでのところ、うたがい検査はすべて陰性、「血液・体液曝露でうつる感染症」はそもそもその濃厚接触がないところでは広がりにくいのだということが実感されているなかですが、うたがいの時点だけで犯罪者であるかのように扱うこのメディア、個人情報漏えいが公的機関からおこる国で、別の意味の恐怖が生じています。 各国のリスクアセスメントの専門家とは真逆のことを書く雑誌もあります。複数筋に取材をするという基本をやっていないのか、最初から書きたいことがあって都合のよい情報・コメント集めだけしたのかもしれませんね。 エボラ・パニック 日本上陸は目前「人類滅亡まで、あと100日」の
influenza-like illness (インフルエンザ様の病気) “ILI”("あいえるあい") はインフルエンザが流行する時期にもみられます。 「インフルエンザウイルス」ではないけれども、別の「ウイルス」で同じような症状が出るわけですね。 それが何かということは研究的関心はあったとしても、だから何か治療薬があるわけでもないので調べたりもしません(病院ではすべてを調べることはできませんし結果によって何か違うアクションがあるわけでもないので調べません)。 日本では抗インフルエンザ薬をバンバン出すので、その前提として検査もよく行われていますが、そもそも基礎疾患のないもともと健康な人たちには薬を出さないことになっている国では検査もしません。自宅で安静にして治す、、、ですから。 なので受診もしません。 こういった国では、脆弱な医療にとんでもない負荷をかけて現場をてんてこまいにして、別の救え
9月4日は「代々木公園の蚊を調べていたらデングウイルスが見つかった」という報道発表があったそうです。 モスキートトラップの成果であり、感染源がわかり、全体の説明がつくようになって整理されてよかったのではないかとおもいます。 (医療機関にとっては9月3日までは少なくとも「この近辺に行った」が参考になります) 全然皆目見当もつかず、、、だとインターネットではすぐ虫よけ剤を売る会社の「陰謀論」とか、 世界転覆をたくらむ某団体によるバイオテロ説がでてきますし、 最近みていたら「放射能のせい」というのもありました。 風疹の流行もエボラもデングも被ばく被害を隠すための政府のたくらみだ!というTweetが本気モードで リツイートされていたりします・・。 記者も何を書いていいのかわからず困っていたようですが(蚊のことはその分野の専門家にインタビューをすればいいんですよ) 「何をしたらいいんでしょう?」(今
議員関連のニュースが目立つこの頃ですが、、、、 議員が感染症の予防/検査/治療/政策に関心を持つのはよいことというのが一般論でありますが、どのスジの情報に当たるのか、そこでの判断、目指す方向性がどのようなものになるのか?には注意が必要という話題です。 NATROM先生の「安保徹氏の反ワクチン論を信じてしまった衆議院議員」は国会議員の話。 どのタイミングでどのソース、そもそもどういった情報が好きとか、周囲にアドバイスをする人がいるのかいないのか等。 いろいろ考えさせられるお話です。 ブログをずっと愛読させていただいているNATROM先生がお書きになった本は、二つの説を並べてどこがどう違うのかを理解しやすいような構成になっています。 印象的なのは、科学的正しさの追求ではなく、健康や安全のために誤解や悪意に注意してほしいと願う、医師としてのパッションです。 学部生のリテラシーやコミュニケーション
HPVワクチンについて、メディアの混乱もみています。 (社内に疫学データを読む訓練を終えている方がいたら確認されるといいですよ・・・・) 基本的な整理をしておきますと、取材や報道の切り口が 1)特定の医薬品の有効性や安全性の話 ならば製品ごとに検討が必要ですので、「子宮けいがんワクチン」ではなくて、2価と4価を分けて論じる必要があります。複数のものを、いっしょくたにして否定するつもりで書いている記事をときどきみかけます。 例えば、抗がん剤全否定論のひとは、個別のデータや事情無くだめなものはだめだ、というスタンスになりますが、実際の「医療」としては、個別のケースで病態やフェーズ、事情、本人や家族の考え方等も違うので、安易に一般化するのは難しくなります。 特定の医薬品の安全性や有効性の方法は、それぞれのデータを評価して、です。 2)接種後の有害事象が問題、という記事を書きたいならば、調査方法、
梅毒は、ある世界では「梅ちゃん」とか「梅吉」という言い方で親しまれている(?)ことは臨床で学んだことのひとつです。 机の上で医学書だけで勉強しているとそういったことはわかりません。 治療法もあるし、周囲に経験者も多数いる。別にショックを受けるほどのことでもないこの病気は、予防の動機付けも難しいのかもしれませんし、予防をしようと心に決めたとしてもその方法が困難、という問題もあります。 ですが、風疹でも痛感しましたが・・・・感染が広がるとたいへんなことになる感染症は初動が大事ですよ。 最終的に一番弱いところにつけがまわってきます。 梅毒も同じ。 「先天梅毒の一例」2012年の症例は、31週で母体の緊急搬送。31週と5日で帝王切開となりました。 いろいろ調べて胎盤からスピロヘーターを確認して、梅毒感染、赤ちゃんは先天性梅毒とわかった症例です。 IASR 2013年4月「本邦における先天梅毒発生予
感染症の流行がおさわまりきるまでは(そのフェーズにあわせた内容で)対策継続が原則です。手を抜くと再燃するリスクがあります。 その必要な対策やとりくみをやらない理由探しをしている人がいるいっぽう、自分にできることはなんだろう?を考えてくださる方もいて救われます。 編集長に「コミケしってます?」ときいたら ん?新しいお菓子かな?といわれました。 なむなむ。 感染症関係者はHajj並に注目すべき、たくさんの人が集まるイベントでございます。 同じ時期にはあちこちで花火大会。老若男女が集まります。 2週間前に接種をしたほうがいいですよというお知らせや、大流行地に来た後に地元で発症する人がいると思うので、その注意喚起をしたいね・・・ということからはじまりまったそうです。 「風疹の流行を止めよう緊急会議」のプロジェクトとして、コミケLOVE、イベントLOVEな皆様が力をあわせて作成。 画像の改変や営利目
今回のクロノロジーを作成しています。 アウトブレイクなどの事件の際、たくさんのプレーヤーやステークホルダーがいるわけですが、 どこが何をした、しなかったということは、今後に向けての報告書を作成する時に重要な情報です。 これは、以前、危機管理の研究班から翻訳を依頼された、SARS流行当時のカナダの検査機関ネットワークの振り返り資料を見て強くそう思ったことです。 縦に時間の経過、横には各機関を書きます。 厚生労働省にはある時から風しんの特設ページができてます。 多くの人は見る習慣がないですが。 これまでに国の取り組みとして何をしてるかは、結核感染症課からでている通知を見るとわかります。 厚労省の通知は、通常は自治体の感染症の対策部門にあててでます。 その地域でよろしく、というわけです。 あるいは学会などに協力依頼、などがあります(検査の試薬が不足してますので、など)。 これを受けて(いや、自主
ワクチンについて、日本独自のルールややりかたをなんとかしないといけない問題がいくつかあります。 例えば、世界は同時接種が基本であり、そのことを説明すると、「単独接種にしないといけない条件とは何か?」と聞かれます。 答えがみつかりません。 医師の世界では、理由には根拠(大なり小なりのEvidence)をつけないといけません。 さらに、生ワクチンと生ワクチンの間は●日間あける、不活化どうしは〇日あける、というローカルルールも根拠が不明確で、いったいいつからの習慣なのかがよくわかりません。 結果として現場や保護者が混乱したり、いらぬ不信をまねいたり、最もさけるべき「延期したために、本来予防できたはずの感染になったり重症化してしまうケース」がでてくることです。 分母が大きくなるとそういった事例は必ず出てきます。 不活化ポリオワクチンの会議レポートをWEB上で連載していたロハスメディカルの堀米記者の
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