モスクワ郊外の「失われた世界」:ロパーチン燐鉱 モスクワから90キロに位置するロパーチン燐鉱は、ヨーロッパ最大の燐鉱山で、1930年代に稼働し始めた。かつてここでは、あらゆる種類のマルチバケット式掘削機が作業していた――鉄道の軌道上を動くもの、キャタピラをもつもの、「針で縫う」ように掘り進むものなど。ここは、独自の鉄道を持つ巨大施設だった。1993年以後この施設は閉鎖され、巨額の費用を投じた工場はうち捨てられていた。 燐鉱の採掘は、地上のものとは思われないような、信じられない風景を生み出した。長く深い採掘跡の溝には水がたまり、その間にテーブルのように平らな砂の畝(うね)が連なって、黒や白、また赤みがかった砂丘が、規則正しく並んだ松林と渾然一体となっている。巨大な掘削機は、空から砂の上に下りた異星人の錆びた宇宙船を想像させる。これらはみな、観光客が入ったことによる破壊以上に、ロパーチン鉱山が