標準化活動を続けることは、企業にとって重い負担だ。長期にわたり自社の技術者を標準化策定活動に参加させなければならず、時間と費用を要するからである。このため、しばしば「標準化は企業にとってどのような意味があるのか?」という疑問が呈される。しかし、少なからぬ欧州企業では標準化活動は事業の成否を分ける鍵と認識されている。実際、欧州企業は、標準化活動を地道に続け、その結果、多くの分野で成功を収めている。その最大の成功例は移動通信産業であろう。ただ、一方で欧州の移動通信産業は特に端末分野において、韓国、中国、台湾などからの攻勢を受け、かつてのような勢いを失った。連載第5回(連載一覧はこちら)となる今回は、欧州移動通信企業を例に、その成功と挫折を検証してみることにする。 1990年代から2000年ごろまで、移動通信産業ではフィンランドNokia社やスウェーデンEricsson社などの欧州企業が世界をリ