前回は,システム開発時に発生する法律問題を概観しました。このうち,システム開発委託契約の締結をめぐる問題点としては,以下の2つが主要な争点となり得ます。 【システム開発委託契約の締結をめぐる問題で想定される争点】 ベンダーとユーザーにおける契約の成否1で契約の成立が否定された場合の発注者における契約締結上の過失の有無 ここでは,1の契約の成否という点にフォーカスして検討してみます。 契約書の作成が合意内容を明確にする 契約とは,「当事者間における合意」と定義することができます。契約は,契約書がないと成立しないと考える方もいらっしゃるかもしれませんが,そのようなことはありません。契約書が存在せず,口頭で約束しただけの場合であっても契約は成立します。 しかし,口頭の約束のように文書にされていない場合,契約当事者間において何を合意したのかはっきりしません。システム開発委託契約のように,複雑な機能
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