引っ越して二年半以上になるのだが、まだ段ボール箱が部屋に積んである。だらしないことなのは間違いないが、もう本棚を買いたくないな、となんとなく思ったのだった。どこに何が入っているのかはリストにしてあるのでそんなに不自由はない。自分が買える値段の棚はだいたいかなり奥行きがあって、本を前後の列に並べることになる。それで後列にある本の存在を忘れてしまう。本当によく読む本は本棚の外にだいたい出ている。そういう生活を九年ぐらいやって、しばらく本棚は欲しくないなと思うようになった。 その段ボール箱の後ろに、ダブルクリップが入っている袋を落とした。焦燥はない。段ボール箱を動かして、そのうち拾ったらいいと高を括(くく)っている。子供の頃には考えられないことだ。小学生の頃は、学習デスクの後ろ側に物を落としてしまうことが恐怖だった。わたしはしょっちゅう物を落としていて、半泣きでデスクの下に潜って壁と背面の間に手