◆病室という密室 入院中の患者は具合が悪くなっていよいよ亡くなるかも、という状態になると個室に移ることが多い。部屋でずっと付き添っている家族がいると、家族愛を感じて微笑ましい気持ちにもなる。忙しい病棟では、看護師が処置の手伝いやら点滴やらで引っ張りだこなので、ナースコールにすぐ応じることもできないので、家族が患者の身の回りのお世話をしてくれていると非常に助かる。 ところが、こうした「家族愛」と見せかけて、ぼくら医療者も寝首をかかれることがある。看護師や医者の目の届かないところで、家族が入院中の患者、とりわけ高齢者に危害を加えてもバレることは珍しいのだ。さすがに壁に患者の頭をゴッツンゴッツン打ち付けてすごい音がしたとか、ボコボコに殴ってアザだらけにしたとか、なにがしかの証拠が残ればぼくらも気づくが、足がつかないようなプロ級の犯行では見過ごしてしまう。 実際、「あまりにおかしなタイミングで急変