米大統領選の激戦州の争奪を巡り、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画が注目されている。買収に反対する全米鉄鋼労働組合(USW)の支持獲得を狙い、民主党候補のハリス副大統領と共和党候補のトランプ前大統領は労組への同調を競い合っている。 計画を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)は、安全保障上の懸念として米国内の鉄鋼生産能力が縮小するなどと指摘しているもようで、ハリス氏を後押しするバイデン大統領が買収を阻止する方向とされる。 だが、独占禁止法上の問題などから同業の米企業との統合が困難なUSスチールは、日鉄の買収が不成立なら合理化のため製鉄所を閉鎖する可能性があり、むしろ雇用不安や生産力の低下を招きかねない。 世界の粗鋼生産量の約半分を握る中国に対抗するため、完全買収で自社の特許技術などを移転し、日米でサプライチェーン(供給網)を強化する日鉄の戦略も修正を迫られ、結果的に中国を利す