小学生の時に将来なりたい職業欄に殺し屋って書いたら校長室まで連れていかれて「実は校長先生はね、君を殺すために未来から送られてきた殺し屋なんだ、優秀すぎる殺し屋は必要ないからね、若いうちに芽を摘み取らなくちゃいけない、わかるね?」って言われてあっけなく降参して書き直すことになった。
1 自転車を漕ぎ出したころには、すっかり外は暗くなっていた。買って組み立てて、それからなんども乗っていないロードバイクだった。 新しい年のはじめ、おれはその自転車に乗らなければいけないような気がしていた。ここで乗らなければ、ずっと乗らなくなってしまうような、そんな気がしていた。おれは、昼頃からサイクル・コンピュータとライトの設置場所、電池の入れ替え、ブレーキの調整、そんなことをはじめた。気がつくとあっという間に時間は過ぎてしまう。 おれはぼんやりとコースを思い描いた。山手本通りから港の見える丘公園、左折して山下公園の前を通ってみなとみらい。帰り道についてはなりゆきだった。最短の山手隧道を通るか、中村川の方を通るか、それとも産業道路を通るか。 まったく、どれでもいいことだった。おれには早く帰らなければいけない理由もなければ、長く乗らなくてはいけない理由もなかった。トレーニングでもないし、決ま
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