ナチズムの美学 キッチュと死についての考察 サユル・フリードレンダー 著/田中正人訳 社会思想社 諸君、百年もしないうちに天然色映画がもう一本制作されて、われわれが切り抜けようとしているすさまじい時代を描くことになるだろう。諸君は、百年以内に諸君を再現してくれるその映画の中で、なんらかの役割を演じたいとは思わないか。今日では、百年後になりたいと願う配役を選択しうるチャンスを誰しもが持っている。諸君に請け合うことができるのだが、その映画は頑張り続けるに値する、人の心を高揚させる見事な大作となるだろう。頑張ってくれたまえ。 一九四四年、映画『コルベルク』にかんして、ゲッベルス 斬新な視点だ。著者の興味の対象は題名(邦題)の通り『ナチズムの美学』。しかしこの本は、ナチス時代の情報「そのもの」について「直接」研究したものではない。ナチズムの崩壊からある程度時間を経た60年代以降に「書かれた」ナチズ