ゲーム研究者の井上明人さんが、〈遊び〉の原理の追求から〈ゲーム〉という概念の本質を問う「中心をもたない、現象としてのゲームについて」。今回は特別編として、「早稲田文学増刊 U30」に掲載された井上明人さんの論考をお届けします。ゲームが「作品である」とき、それはどのような事態か。その問いに答えるべく、前編では「切り取られた〈いま・ここ〉」について論じます。 (初出:「早稲田文学増刊 U30」、早稲田文学会、2010年) 井上明人『中心をもたない、現象としてのゲームについて』 特別編 認知的作品 〈いま・ここ〉を切り取ることをめぐって・前編 コンピュータ・ゲームのようなメディアが「作品である」というとき、それはどのような事態だろうか。 コンピュータ・ゲームというメディアは、コントローラーを手にして直接に遊ばなければ作品として楽しむことができない、とふつう考えられている。 しかし実は、直接手にし