香港政府にとって不吉なことが起きたのは4月27日である。香港競馬の一大イベント、クイーンエリザベス2世カップに悲劇が襲った。ある日本馬が最後の直線で脚を故障し競走を中止、予後不良と診断され安楽死の処置がとられたのだ。 2023年に日本で3冠牝馬に輝いた名馬だった。その名を「リバティアイランド」といった。「自由島」の死…。まるで人々の自由を奪った香港国家安全維持法(国安法)の施行から5年となる香港を象徴する出来事ではないか―。 香港でその話を、ある親中派の名士にぶつけてみた。「何を言うんだ、君は!」と怒鳴られることも覚悟したが、馬主の経験をもつ彼は「実はね」と身を乗り出してきたから驚いた。 「1997年にも似たようなことがあったんだ」 傘がない今年6月、香港島にある「香港新聞博覧館」を再訪した。非営利団体が運営する同館は香港の報道の歴史などを紹介している。国安法施行翌年の2021年にも訪れた
