雨の降りしきる3月の昼下がり、コム デ ギャルソンの創立者である川久保玲は、19世紀に舞踏場として使用されていたパリ18区の建物を会場に2017年秋冬のショーを開催していた。しずしずと進むモデルの多くは、ドレスメーカーのトルソーを彷彿とさせる胴体に両腕を縛り付けられた状態で、断熱素材やアルミ箔、茶色の紙袋にも似た素材で構成された凸凹の球根状の層にくるまれている。 頭には、チーフヘアスタイリストのジュリアン・ディスがスーパーマーケットで見つけたスポンジに着想を得たと語るシルバーのコイル状のウィッグ。唯一、実用性への妥協が認められるのは、足もと──ナイキとのコラボレーションに当たりデザインされたスニーカーである。 フィナーレには、溶けかかった巨大ウエディングケーキを思わせる黒と白の衣装に身を包んだアナ・クリーブランドが登場し、壊れたオルゴール人形のようにクルクル回りながら踊る。2013年以来、