ケン・ローチ監督の『家族を想うとき』(Sorry We Missed You)は、どうしようもなく個人的な記憶が喚起されて冷静に見ることが難しい映画だった。忘れていた、完全に忘れていたわけではないけれど、日常的に意識したり思い出すことの少なくなっていた「お金がないと余裕がなくなって日常がキリキリと苦しくなっていくあの感覚」がよみがえって、12年前の両親との暮らしの記憶が一気に立ち現れて冷静でいられなくなるのだった。 (この映画は「ネタバレ」とは無縁のお話だとは思うけれど、内容について以下で触れているので一応ここで断っておく。) イギリスで暮らす一家の日常が描かれる。ホームレスにはならない程度の貧困にあえいでいる。父親は配送ドライバー、母親は訪問介護の職業に就いている。職にあぶれている訳ではなく、二人とも真面目に働いているし職業意識も高い。15歳くらいの長男は友人グループとのグラフィティにハ
オンライン動画配信サービスHuluが、「ディオール(DIOR)」や「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」を傘下にもつ仏LVMHグループ会長兼CEO(最高経営責任者)のベルナール・アルノー(Bernard Arnault)の生き様を描いたドキュメンタリー「カシミヤを着た狼 〜Kingdom of Dreams〜」を5月17日からHuluプレミアで独占配信する。 ドキュメンタリーでは、ライブラリー資料やインタビュー映像、未公開のアーカイヴ資料を使用し、ベルナールの野望と1990年代初頭から2010年代までのファッション界の黄金期を描く。タイトルの「カシミヤを着た狼」はアルノー氏の異名として知られ、冷徹で強気な経営姿勢で数々のブランドを傘下に収めたことに由来しているという。 4月のHuluプレミアでは、アルノー氏のドキュメンタリーに加えて、アイルランド人シェフがレシピを紹介する「マーク
P2P(ピア・ツー・ピア)ファイル共有ソフト「Winny」の開発者として知られる金子勇氏に、筆者は2009年末、日本経済新聞記者として1度だけお会いしたことがある。金子氏が新たに取得したという特許について、技術の概要を取材するためだ。大阪高等裁判所が金子氏に対して逆転無罪の判決を出して間もない頃だった。 金子氏が取得した特許は、同氏が設立に関わったドリームボート(現Skeed)が開発するP2Pコンテンツ配信ソフト「SkeedCast 2」の中核技術だという。残念ながらリリース時期の都合で記事にはできなかったが、こちらの拙い質問に対し、ホワイトボードをいっぱいに使って熱心に解説していただいたことを覚えている。 3年半がたった2013年7月7日、金子氏が前日に急死したとの情報に触れ、驚いた。金子氏と親しかった慶応義塾大学の村井純教授(当時)に連絡を取って事実を確認し、同氏の追悼メッセージを掲載
2013年4月、映画『めめめのくらげ』が公開された。これは世界的に著名な現代美術家・村上 隆氏による初監督作品で、郊外の街に引っ越していった少年と「くらげ坊」というキャラクターの出会いから始まる冒険を描いたジュブナイル映画だ。 また2020年7月、村上氏のInstagramにおいて、制作中である『めめめのくらげ PART2』のメイキング映像が一部公開された。PART1の数倍の予算と10年という月日が投じられたものの、完成に至らず、中止が決定された。驚くべきは、この巨額の制作予算は、PART1、2ともに、監督である村上氏自身が自らの作品を販売することによって調達したものだという。 PART1公開から9年の歳月を経て、このたび、膨大な資料やスタッフインタビューをまとめ上げたメイキング・アートブック『ジ・アート・オブ・めめめのくらげ』が発売される運びとなった。ここには村上氏本人の手によるデザイン
『ミセス・ハリス、パリへ行く』11月18日公開決定!日本版ティザーポスターが解禁! Fan's Voice Staff 夫に先立たれた家政婦がディオールのドレスに魅せられてパリへと渡る『Mrs. Harris Goes to Paris』が、邦題を『ミセス・ハリス、パリへ行く』として11月18日(金)に全国公開されることが決定し、日本版ティザーポスターが解禁されました。 舞台は1950年代、ロンドン。戦争で夫を亡くした家政婦がある日働き先で1枚の美しいドレスに出会います。それは、これまで聞いたこともなかった、クリスチャン・ディオールのドレス。500ポンドもするというそのドレスに心を奪われた彼女は、パリへディオールのドレスを買いに行くことを決意。新しい街、新しい出会い、そして新しい恋……夢をあきらめなかった彼女に、素敵な奇跡が起こり──。 主演は『ファントム・スレッド』(17年)でアカデミー
『ハウス・オブ・グッチ』は2022年1月14日から全国公開。 ⓒ 2021 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. ALL RIGHTS RESERVED. レディー・ガガは、『アリー/ スター誕生』(2018)で共演したブラッドリー・クーパーに最新作『ハウス・オブ・グッチ』への出演を相談していたそうだ。ガガはエンターテイメント・ウィークリーのポッドキャスト番組「Awardist」で「ブラッドリーは、『アリー/ スター誕生』のアリー・メイン役で私を本当に信頼してくれたし、その役とサウンドトラックを任せてくれるかたちで私に力をくれた」と語る。 そして、映画と音楽という「芸術的なコラボレーションの成功のおかげで、今の自分にたどり着いたと思う。私は何年もブラッドリーに相談してきたけど、彼のサポートやアドバイス、私の将来に対する彼の考えにいつも感謝している」と続けてい
あの作品の“モノ”を徹底リサーチ #02 映画やドラマや小説に登場するモノは、ときに人物と同じように語り、演じ、物語の世界を作り上げます。山崎まどかさんは、ニューヨークという街で女の子が奮闘する映画に注目。1961年に一世を風靡した『ティファニーで朝食を』から約60年、大都会で生きるヒロインのライフスタイルは、どんな変化を遂げてきたのでしょうか。経済状況や女性と社会の関係も移ろう中、夢を追いかける彼女たちの持ち物や服装は――? 現代が舞台のノア・バームバック監督『フランシス・ハ』、レナ・ダナム監督『タイニー・ファニチャー』とともに、作中の“モノ”からその背景を解読していきます。(編集/メルカリマガジン編集部、イラスト/二階堂ちはる) ニューヨークの女の子たち、特に若い独身の女の子はどんな部屋に暮らしているのだろう? この街を舞台にした映画を見ると、いつもヒロインが住んでいるアパートメントの
日曜日(9月26日)第74回トニー賞が開催され、デヴィッド・バーンが、ブロードウェイで上演した『American Utopia』でスペシャル・トニー・アワード(特別賞)を受賞した。 ◆関連画像 『American Utopia』はバーンが2018年にリリースした同名のアルバムをもとに、ミュージカルの要素を加え、2019年秋、ブロードウェイで初演された。アルバムが2019年開催の第61回グラミー賞で最優秀オルタナティヴ・ミュージック・アルバムにノミネートされたのに続き、第63回グラミー賞ではキャストによりレコーディングされた『American Utopia On Broadway』が最優秀ミュージカル・シアター・アルバムの候補に挙がっていた。 また、ブロードウェイでのパフォーマンスは、スパイク・リー監督でコンサート映画にもなった(2020年公開)。 トニー賞の授賞式に出席したバーンは、スペシ
このnoteのポイント ・社会課題について、手軽に学ぶならドキュメンタリー映画がおすすめ。 ・人権、労働問題に影響を及ぼすファッション業界に切り込む「The True Cost」 ・環境問題に影響を及ぼす工場式畜産業の問題に切り込む「COWSPIRACY」 ・そして、食・環境問題を中心にシリーズで社会課題を深掘りする「明日の地球」が特におすすめ。こんにちは。Good Tideチームリーダーの太田です。 日々SDGs関連のニュースを追っていると、アメリカやヨーロッパをベースとした企業の動きが活発化しているのがよくわかります。 日本企業も市場から、環境や社会に対しての抜本的な取り組みが求められる時期がすぐそこまで来ているかもしれません。 そこで、今回はSDGs内でも課題として挙げられている社会問題について、イチから学べるドキュメンタリー映画をご紹介します。 SDGsの担当者になったり個人的に関
世界全体で売上部数250万部を超えた異例の経済書『21世紀の資本』が映画となって3月20日から日本で公開される。原作者のトマ・ピケティが映画公開に先立ってパリで催された試写会・トークイベントに登場し、新型コロナウイルスや中国における検閲、米国の政治状況について語った。 分厚い本を読まない人にも格差について知ってほしい 行列に並んで店に入ったものの、買いたかった商品は棚にない。マスクや消毒用アルコール、トイレットペーパーのことではない。店の棚はほぼ空っぽ。食べられそうにない悪臭のする肉などが売られているだけだ──。 映画版『21世紀の資本』は、共産主義体制が崩壊した東側諸国のそんな悲惨な光景から始まる。原作者のトマ・ピケティは学生時代に、そんな東側諸国を旅して、内側からその惨状を見たと映画で語る。 「共産主義の欺瞞が白日のもとに晒され、資本主義が支持されることになりました。ただ、問題はそれが
0.001 秒の短縮に一生を懸けた熱き男たちの物語『ハミングバード・プロジェ クト 0.001 秒の男たち』が9 月 27 日より全国公開されることが決定。予告動画も公開された。 映画『ハミングバード・プロジェ クト 0.001 秒の男たち』は、『マネーボール』や『マネー・ショート 華麗なる大逆転』など、数多くの映画化原作を持つマイケル・ルイス著『フラッシュ・ボーイズ 10 億分の1秒の男たち』に記されている、実話を基にした物語。 本作では、1 秒に満たない極めて短い時間にコンピューターで株のやり取り戦略を自動的に実施するシステム、高頻度取引に絶対的勝利をもたらすため、カンザス州からニューヨ ークまでの約 1,600 ㎞を直線のネットワークでつなぎ、0.001 秒の時間短縮を目指した熱き男たちの姿を描いている。 プロジェクトを発案する主人公ヴィンセントに映画『ソーシャル・ネットワーク』のジ
2部作がロングランヒットを記録し、『バーフバリ 王の凱旋<完全版>』が6月1日より公開 - (C)ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED. インド映画『バーフバリ』二部作の盛り上がりが止まらない。一作目の『バーフバリ 伝説誕生』が日本公開されたのは昨年4月。あくまでも小規模な上映だったが、一年を経た今もリバイバル上映が繰り返し行われている。そしてインド映画史上ぶっちぎりの大ヒットとなった後編『バーフバリ 王の凱旋』は昨年12月に日本公開され、応援上映や爆音上映といったイベント企画は完売状態。さらにファンの熱い要望で、日本で上映されていた「インターナショナル版」より26分長い167分間の『バーフバリ 王の凱旋<完全版>』が6月1日より公開されるという異例の事態になっている。果たしてこの映画の何がこれほどの熱狂を生んでいるのだろうか?(村山章
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