ノルウェー人がドイツ人に、日本人が中国人に変身 世の中には不思議な病気があるもので、「外国語様アクセント症候群(foreign accent syndrome:FAS)」は、その一例といえます。FASは、たとえばイギリス人がフランス語訛りの英語を話すといったように、同じ母国語を使用する第三者が「外国語のようだ」と違和感を持つような発話になってしまう障害です。その特徴として、音の高低や強弱、リズムなどのイントネーションの異常がみられ、一方で語彙・文法機能はほぼ正常に保たれています。 最初の報告は1919年で、左脳卒中によってポルトガル語訛りになったチェコ人男性のケースでした1)。しかし、詳細な検討は行われておらず、病巣や言語所見についての学術的な検討を行った初期代表例としては、ノルウェーの神経学者であるMonrad-Krohnが1947年に発表した報告が挙げられます2)。同報告で紹介されてい