貧血が少し収まった。ふらつきは少し緩和された。 だが、頭のなかで「ナンバーナイン」の声は続いている。 全身が梅雨の小糠雨(こぬかあめ)で濡れそぼっていた。 道路にひっくり返っていた傘を拾った。 このままだとさすがに風邪を引くと思った。 やがて駅の前にあるロータリーに差し掛かった。老人のようにゆっくりと歩いていたからか、やたら時間がかかった気がした。時間がかかったせいで、濡れそぼった身体はすっかり冷え切って、少し前から首や肩に悪寒(おかん)が走っていた。このままでは確実に風邪を引く、そんな予感がした。 ロータリーの上空には巨大な歩道橋が架かっていた。歩道橋を使うとロータリーをぐるりと回らなくても、JRの駅舎と、私鉄の駅とデパートを兼ねた建物にまっすぐ行ける。歩道橋の下に緑色の車体のタクシーが何台も停まっていた。平日の昼前にタクシーを使う人間はそれほどいないのだろうか。元々雨雲が空にかかってい
![第四話 「会社を辞めた日のこと」~ Revolution 9④ - 人生で迷っている人たちの短編集(まさりん) - カクヨム](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/da2f792baedca9bf0614590a2e61ae129559b473/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fcdn-static.kakuyomu.jp%2Fworks%2F1177354054891817316%2Fogimage.png%3Fq9Pmvox92lyIkCatqZPFujHQM1w)